The previous night of the world revolution5~R.D.~

そこからは、総力戦であった。

『青薔薇連合会』への復讐が目的というだけあって、『厭世の孤塔』はこの地下室を要塞のようにして、俺達を迎え撃つ準備をしていた。

まぁ、俺がダイナミック入室したせいで、やや指揮系統が乱れているようだが。

てへっ。

それはともかく、相変わらず『厭世の孤塔』の残党達は、やはり十把ひとからげのマフィアとは違った。

兵の練度が桁違いだ。

ルアリスの『青薔薇十字軍』をアリンコの集団だとしたら、こいつらは本物の人間の軍隊だ。

俺の鎌を前に、逃げ出さないというだけでも立派なもんだ。

ちょっと俺の鎌、今なまくらなんだけど。

「ちっ。切れ味が悪い」

一振りで敵の首を刈れなくなってきた。

ここに来るまで、何人も斬ってきたせいで、ただでさえ血と脂肪で切れ味が悪くなってるのに。

コンクリ壁破壊のせいで、かなり劣化が激しい。

一応これでも使えるには使えるが、死神的爽快感に欠ける。

それに、気になることがもう一つ。

多分、ルルシーも気づいてるんだろうけど。

「…アリューシャ!俺達は良いので、シュノさんのサポートを!」

「!分かった」

中衛が、押されている。

前衛の俺とルルシーは、互いに背中を守り合って、夫婦の完璧なフォーメーションで迎撃しているが。

中衛を守るシュノさんが、やや押され気味になっている。

シュノさんの戦闘力が欠けている訳ではない。

単純に、数の暴力に押されているだけだ。

おまけに、シュノさんには、後衛で砲台を務めるアリューシャを護衛するという役目もある。

俺達も、出来るだけシュノさんのいる中衛に敵を回さないよう、努めてはいるが。

この兵の練度では、限界がある。

そして。

「くっ…!」

「シュノさん!」

シュノさんの左手を、敵の銃弾が掠めた。

鮮血が迸り、シュノさんは苦悶の表情を浮かべた。

「大丈夫ですか!?」

もしシュノさんが倒れるようなことがあれば、そのときは作戦変更だ。

彼女を失う訳にはいかない。

しかし。

「大丈夫、掠めただけだから」

シュノさんは気丈にそう言って、また態勢を立て直した。

掠めただけとは言うが、止血は必要だし、痛みも相当なもののはず。

『シュノ。無理せず退いて。少し前線を下げる』

アイズが、インカムからそう指示した。

彼らしい判断だ。

シュノさんが被弾して、彼女をこのまま戦わせるより、前線を下げて陣を立て直すことを選んだ。

「っ、私は平気よ!これくらい…」

「シュノさん、ここは…」

抗弁しようとするシュノさんを説得して、俺とルルシーも一時少しだけ下がろうとした。

すると、そのとき。

「大丈夫だ、アイズ先輩。その必要はない」

救世主、ルリシヤが合流した。

「ルリシヤ…!」

「済まない、遅くなったな」

待ってたよ、君の合流を。

「全くもう。デートに遅れるなんて、男性失格ですよ?」

「失敬。ヒーローはいつも遅れてやって来る、って奴だ」

言うじゃないか。

さすが、俺の見込んだ後輩だ。