…さすがの威厳、ってところか?
あるいは、傲慢か…。
神の信徒とやらになれば、こんなにも堂々としていられるもんなのか?
「愚かな人々。そして、なんて憐れな人々でしょう。神の愛も…その教えも信じることの出来ない、不信仰者達…」
「…このようなやり方でしか布教出来ない神なら、憐れんでもらわなくて結構だ」
冷たく言い返すオルタンス。
…そうだな。
「『天の光教』教祖、ルチカ・ブランシェットだな。身柄を拘束する」
「…えぇ、どうぞ。抵抗はしません」
随分と、潔いことで。
ルチカ・ブランシェットは、大人しく両手に手錠を嵌められた。
だが、その目は俺達に対する敵意に染まっていた。
そして、いきなり喋り始めた。
「私は、権力を欲しいままにし、弱者を虐げ、神を蔑ろにするあなた方を許しません。あなた方には、必ず神の鉄槌が下ることでしょう」
「…」
言ってることが、矛盾してきてないか?
大いなる神の愛で、全て包んでくれるんじゃなかったのか?
それだけ、この女ももう余裕をなくしているのだろう。
「私はこの命を懸けて…あなた方を正しき神の道に連れ戻します」
「…何?」
ルチカ・ブランシェットは狂気の眼差しで、俺達を睨んだ。
命を…。
「どういう意味だ?」
「私は、みすみす犯罪者のレッテルを貼られ、晒し者にはされません。神の信徒であり、『天の光教』の教祖である私は、誰よりも正しく敬虔に、神の信徒としての在り方を示さなくてはならないのです」
「話が見えないんだが」
「それが、不信仰者であるあなた方の限界です」
…何だと?
「そもそも、神の信徒と言いながら、権力を嫌いながら、何故『厭世の孤塔』と手を組む?彼らはお前達の大嫌いなマフィアだろう」
…確かにな。
それだけ追い詰められてたってことなんだろうが…。
どう言い訳するつもりなのかと思ったら。
「利害が一致していただけです。彼らは私達と同じく、帝国騎士団を…そして、『青薔薇連合会』に復讐することを目論んでいました」
…やはり、そういうことか。
『厭世の孤塔』の目的は、あくまで『青薔薇連合会』…。
お互いに、因縁を断ち切らなければ気が済まないようだ。
「それに彼らは、私達では手に入れられないものを持っています」
「…何?」
「…私は、『厭世の孤塔』の方々に依頼して、この建物の各所に時限式の爆弾を仕掛けさせてもらいました」
「…!」
あの小会議室にあった爆弾…やはり。
そういうことだったのか。
「あと数分で爆発するでしょう。避難は間に合いません」
「…分かっているのか。俺達のみならず、自分も、まだ建物に多く残っている信者達も巻き込むことになるんだぞ」
「神の正しき道に帰依する為に、必要な犠牲です。彼らも私も殉教者となり、神の御元に導かれるのです」
綺麗事だな。
殉教者という言葉で、人殺しを正当化しようとしているに過ぎない。
そんなものは都合の良い、ただの言い訳だ。
「あなた方と私達の死によって、この国は変わります。権力に支配された悪しき世を正し、全ての人々が平等な、愛に溢れた世界を…」
さてと、ここいらで。
「『青薔薇連合会』の幹部殿から、伝言だ」
俺は、ルチカ・ブランシェットの言葉を遮って言った。
「…?」
今こそ、あれを伝えるべきだろう。
この場にルレイアがいたら、高笑いしていただろうな。
見せてやれないのが残念と言うべきか、見せなくて良かったと言うべきか。
「『この俺の仮面を欺くには、少々爆弾の配置が甘かったようだな。悪いが、アクション映画の主人公の座は、俺が頂いていく』とのことだ」
あのキザな仮面で言うんだから、なかなか様になってるのが憎いところだな。
あるいは、傲慢か…。
神の信徒とやらになれば、こんなにも堂々としていられるもんなのか?
「愚かな人々。そして、なんて憐れな人々でしょう。神の愛も…その教えも信じることの出来ない、不信仰者達…」
「…このようなやり方でしか布教出来ない神なら、憐れんでもらわなくて結構だ」
冷たく言い返すオルタンス。
…そうだな。
「『天の光教』教祖、ルチカ・ブランシェットだな。身柄を拘束する」
「…えぇ、どうぞ。抵抗はしません」
随分と、潔いことで。
ルチカ・ブランシェットは、大人しく両手に手錠を嵌められた。
だが、その目は俺達に対する敵意に染まっていた。
そして、いきなり喋り始めた。
「私は、権力を欲しいままにし、弱者を虐げ、神を蔑ろにするあなた方を許しません。あなた方には、必ず神の鉄槌が下ることでしょう」
「…」
言ってることが、矛盾してきてないか?
大いなる神の愛で、全て包んでくれるんじゃなかったのか?
それだけ、この女ももう余裕をなくしているのだろう。
「私はこの命を懸けて…あなた方を正しき神の道に連れ戻します」
「…何?」
ルチカ・ブランシェットは狂気の眼差しで、俺達を睨んだ。
命を…。
「どういう意味だ?」
「私は、みすみす犯罪者のレッテルを貼られ、晒し者にはされません。神の信徒であり、『天の光教』の教祖である私は、誰よりも正しく敬虔に、神の信徒としての在り方を示さなくてはならないのです」
「話が見えないんだが」
「それが、不信仰者であるあなた方の限界です」
…何だと?
「そもそも、神の信徒と言いながら、権力を嫌いながら、何故『厭世の孤塔』と手を組む?彼らはお前達の大嫌いなマフィアだろう」
…確かにな。
それだけ追い詰められてたってことなんだろうが…。
どう言い訳するつもりなのかと思ったら。
「利害が一致していただけです。彼らは私達と同じく、帝国騎士団を…そして、『青薔薇連合会』に復讐することを目論んでいました」
…やはり、そういうことか。
『厭世の孤塔』の目的は、あくまで『青薔薇連合会』…。
お互いに、因縁を断ち切らなければ気が済まないようだ。
「それに彼らは、私達では手に入れられないものを持っています」
「…何?」
「…私は、『厭世の孤塔』の方々に依頼して、この建物の各所に時限式の爆弾を仕掛けさせてもらいました」
「…!」
あの小会議室にあった爆弾…やはり。
そういうことだったのか。
「あと数分で爆発するでしょう。避難は間に合いません」
「…分かっているのか。俺達のみならず、自分も、まだ建物に多く残っている信者達も巻き込むことになるんだぞ」
「神の正しき道に帰依する為に、必要な犠牲です。彼らも私も殉教者となり、神の御元に導かれるのです」
綺麗事だな。
殉教者という言葉で、人殺しを正当化しようとしているに過ぎない。
そんなものは都合の良い、ただの言い訳だ。
「あなた方と私達の死によって、この国は変わります。権力に支配された悪しき世を正し、全ての人々が平等な、愛に溢れた世界を…」
さてと、ここいらで。
「『青薔薇連合会』の幹部殿から、伝言だ」
俺は、ルチカ・ブランシェットの言葉を遮って言った。
「…?」
今こそ、あれを伝えるべきだろう。
この場にルレイアがいたら、高笑いしていただろうな。
見せてやれないのが残念と言うべきか、見せなくて良かったと言うべきか。
「『この俺の仮面を欺くには、少々爆弾の配置が甘かったようだな。悪いが、アクション映画の主人公の座は、俺が頂いていく』とのことだ」
あのキザな仮面で言うんだから、なかなか様になってるのが憎いところだな。


