The previous night of the world revolution5~R.D.~

自分の部屋に帰ってから。

私は、薄っぺらい毛布にくるまって、ワンピースの下から本を取り出した。

そのときの私は、まだその本の意味するところを理解していなかった。

その本は、アメリア教という、このルティス帝国で長らく信仰されてきた宗教の経典だった。

だけど当時の私はまだ、これがアメリア教の経典なのだということを、まだ知らなかった。

それを知ったのは、本の最初のページを捲って、そこに書かれている文章を読んでからのことだ。

勿論、アメリア教の存在は知っていた。

そんな宗教が、この国に存在するのだということくらいは。

でも当時の私は、アメリア教の名前と、それが宗教であるということ以外、何の知識も持っていなかった。

アメリア教の神が何者なのか、祈りの言葉が何なのか、それすらも。

聖典を読んで、初めて知った。

私はその日、神の御言葉に触れた。

まるで、目が開くようだった。

それまでずっと、汚い、貧しい世界しか知らなかった私にとって、その聖典の中は、心のオアシスのようだった。

私の求める全てが、そこに書かれていた。

私は、神の愛に触れた。

私の生きる道は、これだと思った。

その日から私は、神の敬虔なる信徒になった。

それまでの私はいつも、他の子にいじめられたりからかわれたりする度に、めそめそと泣いている子だった。

何で私だけ、何で私はこうなんだろう、と自分を責めていた。

でも、それはもうやめた。

神の愛は誰にでも平等だ。

私はいつでも、神に守られている。

誰も味方なんていないと思っていた。でも、神はいつも私の傍に寄り添って、私を見守っていらっしゃる。

ならば、何を恐れることがあるだろう。

私をいじめる彼らは、神の愛を知らない。神の教えを知らないのだ。

知らないから、平等であるべき他者を、平気で傷つける。

ならば、私は彼らを憎むのではなく、憐れむべきなのだ。

可哀想に、あの人達は、神が与えてくださる愛に気づいていない。

だから、私は彼らの代わりに祈った。

どうか私を傷つける人々が、いつか神の愛に気づき、己の過ちを悔いるときが来ますように、と。

私は神の愛を知り、生まれ変わった。

自分の生きる道を知った。

神の為に、この命を使おうと決意したのである。