The previous night of the world revolution5~R.D.~

「死者が出た」

オルタンスは、簡潔にそう言った。

…まぁ、そうだろうね。

いつかはそうなると思ってたよ。

拳銃ぶっぱなしてるんだろ?今まで死者が出なかった方がおかしい。

ましてや、拳銃の扱いに慣れていない『天の光教』の連中だ。

そりゃ死ぬだろうよ。

「誰が?」

「『天の光教』が襲撃した貴族の屋敷に勤めている、使用人が二人」

二人もか。

それはそれは。お気の毒なことで。

貴族の屋敷に勤めてるってだけで、使用人は一般人だろうに。

「世間にはまだ伏せている情報だ」

「…それが賢明でしょうね」

そんなもん、大衆に知らせてみろ。

以前、帝国騎士団が『天の光教』の学生を怪我させたことがあったが。

あのとき以上に炎上するのは、目に見えている。

最近の『天の光教』叩きの風潮は、ルチカ教祖が気の毒になってくるくらいだからな。

あいつら、今まで散々帝国騎士団や『青薔薇連合会』をディスっておきながら。

今度は同じ口で、『天の光教』をディスるんだからな。

「インチキ宗教団体」とか言ってさ。

よく言うよ。ちょっと前までリスペクトしまくってた癖にさ。

これだからマスコミって奴は。

とにかく、今の状態で、『天の光教』によるテロで一般人に死者が出たなんて知られたら。

今以上に、メディアも大衆も大きな声で騒ぎ立てるだろう。

最悪、パニック状態に陥りかねない。

勿論ずっと隠しておく訳にはいかないから、いずれは折りを見て報道する必要があるが…。

「で、殺した奴は?まさか逃がしてませんよね?」

もし殺人犯を野に放してしまったのなら、間抜けなんて話じゃ済まないが?

「勿論だ。捕らえて、取り調べを受けさせている」

「取り調べ、ね…」

「…悪いが、容疑者をそちらに引き渡す訳にはいかないぞ」

「分かってますよ」

表社会と裏社会の区別は、しっかりつけろってことだろ?

俺達の方に捕虜を渡してくれれば、今すぐにでも『青薔薇連合会』の尋問フルコースを受けてもらったのに。

きっと、すぐ吐くだろうなぁ。

とはいえ、『天の光教』は今でも一応、表社会の組織。

容疑者を俺達に引き渡す訳にはいかない。

裏社会の法ではなく、あくまで表社会の法で裁かなくては。

残念だ。

「何か吐いたんですか?協力してる非合法組織の名前とか」

「あぁ、吐いた」

「それを先に言えよ」

まず第一にそれを言えよ。

何黙ってんだお前。殺すぞ。

「『天の光教』と組んでいる組織は、『厭世の孤塔』だ。聞き覚えはあるな?」

「…」

…へぇ。