The previous night of the world revolution5~R.D.~

…あ?

少し訛りのあるルティス語で話しかけられ、俺は振り向いた。

そこにいたのは。

「あぁ…。誰かと思ったら、アシミムの腰巾着じゃないですか」

通称、アシミムの腰巾着。

ルシード・キルシュテンである。

「…」

ルシードの顔を見るなり、ルルシーは警戒心を剥き出しにした。

ルルシーにしてみれば、ルシードはアシミムの手先。

かつて俺達をあの恐ろしい洗脳船『ホワイト・ドリーム号』に導き、俺の洗脳に荷担した人間だ。

警戒するのも無理はない。

「何か用ですか」

「出迎えだ。主のところに、無事送り届けるよう仰せつかっている」

ほう。

「そりゃあまたご親切にどうも。そうやって、また俺達を洗脳船にでも閉じ込めるつもりですか?」

「貴殿らはルティス帝国からの、大切な客人だ。くれぐれも丁重に扱うようにと仰せつかっている」

それはそれは。

騙されてはいけない。シェルドニア王国の、アシミムの「丁重」は、俺達の知っている辞書とは別の意味なのだろうからな。

「つまり、アシミムのところまで送ってくださると?」

「そうだ」

「そりゃどうもご親切に、ありがとうございますね」

俺は、嫌味たっぷりにそう言ってやった。

毎度毎度、連れていってもらっちゃって申し訳ありませんね。

「警戒するのも無理はないだろうが…。我々は、貴殿らをあくまで国賓として迎えるつもりだ。以前のように…危害を加えるつもりは毛頭ない」

そうだろうとは思ってるけど。

口先だけならどうとでも言えるからな。

「なら良いんですけどね。如何せんあなた方には『前科』があるものですから、こちらも警戒せざるを得ない訳で」

「…理解している」

「そうですか」

とにかく、迎えに来てくれたのなら好都合。

「良いですよ。ついていってあげましょう」

「…信用して良いのか?ルレイア」

ルルシーが、声を低くして尋ねた。

気持ちは分かる。

だが。

「問題ありません。俺にはもう洗脳は通用しないし、第一…俺達三人が集まれば、ルシードが五人いたって、相手になりませんよ」

前回の訪問のときと違って、今回の俺達は、フル装備だ。

俺は使い慣れた鎌を荷物に忍ばせてきたし、ルルシーも愛用の武器を携帯している。

ルリシヤなんて、万一のときに備えて、新発明の武器を大量に仕込んでいるとか。

フル装備の俺達が三人いれば、ルシードが五人いたとしても相手にはならない。

ルシードが十人いたら、ちょっとは苦戦するかな?ってくらい。

洗脳されて、頭の中お花畑のシェルドニア軍なんて、ハナから俺達の敵ではないし。

華弦という戦力もなくした今のアシミムに、俺達三人にまともに対抗する戦力があるとは思えない。

それに。

「どうせ俺達はこれから、アシミムのところに行かなきゃならないんです。連れていってもらえるなら、さっさと連れていってもらいましょう」

「…分かった。気を付けろよ、ルレイア」

「ルルシーもね」

そんな会話を交わして、俺達はルシードが用意させていた国賓用の高級車に乗り込んだ。

これもまた見事に真っ白な車で、吐き気がした。

だが、以前アシミムの館に連れていかれたとき乗せられていた、窓の外が見えない囚人用護送車ではなかった。

それだけが救いだった。