The previous night of the world revolution5~R.D.~

「この世からおやつが消えるなんて…。皆何でそんなに呑気でいられるんだ。世界の終わりだぞ。ビックバンだぞ…!?」

「…アリューシャ。それ世界の始まり。終わりはハルマゲドン」

紛らわしいよねー。

まぁアイズの言った例は、かなり極端だから。

例えどんなに不景気が蔓延しようとも、ルティス帝国から一切のお菓子屋さんが消えることはないだろう。

ルティス帝国は、その長い歴史の中で、これまで何度も不景気の波を乗り越えてきた。

流れに身を任せ、ついでに帝国騎士団に面倒臭いこと一切合切押し付けておけば、いつかは不景気も脱却するだろう。

経済なんてそういうものだ。

しかし、アリューシャは大層心配になったようで。

「どうしたら良いんだ…。アリューシャは世界を救う為に、どうしたら良いんだ!?誰を撃ち抜けば、この戦争は終わるんだ…!?」

物凄く格好良い名言みたいになってるな。

全てはおやつを守る為なんだけど。

ルルシーは、もう呆れ返って何も言わなかった。

「残念ながら、アリューシャが誰かを格好良く撃ち抜いて解決する問題じゃないんだよ」

「そうなの!?」

「そうなの。だから大変なんだよ」

今までの事件とは違う。

帝国騎士団が悪い、『シュレディンガーの猫』が悪い、憲兵局が悪い、アシミムが悪い。

今までは、誰が悪いのかはっきりしていた。

しかし今回は、誰が悪い、と特定の人物や組織を特定することは出来ない。

強いて言うなら、目に見えないものが敵。

アリューシャが格好良く撃ち抜いたり、俺が格好良く鎌で切り裂いたりして解決するなら、どんなに簡単だったろう。

でも、そうは行かない。

誰も悪くないからこそ、この問題は難しい。

「じゃあアリューシャはこのまま指を咥えて…世界の終わりを眺めてることしか出来ないのか…!?アリューシャに、アリューシャに何か出来ることは…!」

「そうだな…。やっぱり一番良いのは、こんなときだからこそ、お金を使って経済を回すことだね」

「金!?金使えば良いのか!?」

まぁ、単純に言えばそうなるね。

皆が貯蓄に回してお金を使わなくなるから、不景気が加速するのであって。

皆がお金を使って経済を回せば、景気は回復する。

「よし分かった!じゃあアリューシャ、今すぐチュッパチャプス10本大人買いしてくる!」

成程、それも立派な経済貢献。

それなのに、ルルシーはずるっ、とずっこけた。

「お前な…。チュッパチャプス10本ごときで経済が動く訳ないだろ…」

「いや、分かりませんよルルシー。もしかしたらアリューシャがチュッパチャプスを大人買いしてる姿に触発されて、皆が経済を回し出すかもしれませんし」

その可能性は限りなく低いけどな。

まぁ、何も買わないよりはマシ。

しかし。

「駄目だよ、アリューシャ。そんなにたくさんチュッパチャプスを舐めたら、虫歯になっちゃうからね」

そういえばそうだ。

「えー…。じゃあ他のもの買わなきゃ駄目?」

「そうだね。買うなら他のものにしようね」

他のもの…か。

…うーん。

こんなときだからこそ、俺達富裕層が積極的に経済を回すべきだよな。

ルティス帝国そのものには何の興味もないし、滅びてくれても構わんが。

しかしルティス帝国経済が崩れれば、『青薔薇連合会』も無関係ではいられなくなってくるし。

…よし。

良いこと思い付いた。

「分かりました。では皆さん、ここは一つ我々がドカンと一発お金を使って、ルティス帝国経済に貢献しようじゃありませんか」

経済貢献、兼、暇潰しに持ってこいの企画である。