The previous night of the world revolution5~R.D.~

『天の光教』を敵に回すことは、国民を敵に回すこと。

この場にいる全員が、それを理解している。

それでも、何故アストラエアやユリギウスが、頑なに『天の光教』を認めようとしないのか。

それは、単に彼らが過激派な性格をしているからだけではない。

アストラエアの言う通りだ。

ルティス帝国には、何千年もの歴史がある。

長年受け継がれてきた、ベルガモット王家の血筋がある。

ただ一時の国民感情に流されて、その王政に傷をつけるようなことになれば。

俺達は、後の歴史の笑い者。

弱腰で、軟弱で、国民の顔色を伺う弱虫の政府。

これまで受け継がれてきたものには、意味がある。

そう簡単に、変えて良いものではない。

ルティス帝国の不況は、確かに痛い。

でも、永遠に続く訳じゃない。

いずれ、景気は回復する。

そうすれば、また国民達の心は戻ってくるだろう。

『天の光教』という、胡散臭い宗教に惑わされることもなくなるだろう。

国民達がいくら「こうして欲しい」と言っても、その度に制度を変えているんじゃ、国家の威信に関わる。

ルレイアに聞かせりゃ、こんな国に威信など、と鼻で笑うのだろうが。

俺だって、馬鹿馬鹿しいとは思う。

でも、あながち笑っていられるものではない。

国の威信。威厳。そんな馬鹿馬鹿しいものが、国を守るには必要なのだ。

威信を失えば、あっという間にルティス帝国は他国に攻め入られるだろう。

ルティス帝国が、訳の分からない新興宗教に屈したなどと、諸外国に知られてみろ。

俺達は、そしてルティス帝国は、世界中から笑い者にされる。

あっという間に舐められて、ますます国民は不利な状況に陥る。

それだけは阻止しなくてはならない。

政府に不利な状況だからこそ、今こそ俺達帝国騎士団は、歴史の中で培ってきた絶対的な威厳を示す必要がある。

そして、それを次代に繋げていく義務がある。

それが、国を背負う者に課せられた責任なのだから。