The previous night of the world revolution5~R.D.~

話し合いねぇ…。

俺はこれ以上、議論するつもりはないのだが。

「私は私の思想を間違っていないと思っています。しかし、あなたは間違っていると思っている。それは何故ですか?」

「俺とあなたが違う人間だからじゃないですかね?」

「確かに私とあなたは違う人間です。でも、同じ人間でもあります。それなのに、何故分かり合えないのでしょう」

「年齢サバ読んでるからじゃないですか?」

ルルシーがずっこけた。

「お前…。それ関係ないだろ…」

あ、そう?

どうしても気になったもんだから、つい。

しかし、ルチカ教祖は動じない。

あくまで自分の実年齢は認めないつもりだな。この卑怯者め。

「あなたは、自分だけが幸せならそれで良いと仰いましたね」

「はい」

自分だけ幸せならそれで良いよ?

「でもそれは、きっと不幸になっている人が自分の目の前に見えていないからだと思うのです」

は?

「例えば、あなたが午後に優雅にお茶を楽しんでるところに、目の前に今にも飢えて死にそうな少女がいたら、あなたは無視してお茶を楽しめますか?」

はぁ。そういう言い方をするか。

でも、そんなもんでは俺を篭絡するのは無理だぞ。

「楽しいですよ?」

楽しいに決まってる。

「横に愛する人がいて、周りに一緒にお茶を楽しむ人がいるなら、俺はそれで満足です。目の前で飢えて死にそうな人がいても、俺は気にしない」

幸福な者がいて、不幸な者がいる。

世の中の摂理ってもんだろうが。

「なら、その愛する人が不幸な者になったとして、あなたは無視するのですか」

「無視する訳ないじゃないですか。助けますよ?他の誰かを何人蹴落としてでも、助けますよ」

俺と俺の周囲が幸せなら、他なんてどうでも良い。

人間には、二本の手しかないのだ。

何もかも掴めはしない。

何かを犠牲にしなければいけないのなら、容赦なく他人を犠牲にする。

それの何が悪い。

「どうしてこんなに考えが違うのか、って言いましたね」

その答えを教えてやろう。

「それは、あなたが不幸な人間の目線に立っていて、俺が幸福な人間の目線に立っているからです」

その間には、絶対的な越えられない壁がある。

分かり合おうとしても、それは無理な話なのだ。

「幸福な者は、不幸にはなりたくたいと望む。だから、自分の幸福を守る為に不幸な者を蹴落とす。逆に不幸な者は当然、幸福になりたいと望む。でもその術が分からないから、『平等』という言葉で幸福を得ようとする」

便利な言葉だよな。平等って。

こんなに不平等なことはないってくらいに。

「俺は今幸福だから、不幸な者を踏みにじる。あなたは今不幸な者の立場に立ってるから、『平等』という免罪符を振りかざして、自分達も幸福になろうとしている」

「それの何が悪いのですか?誰しも幸福になりたいのは当然のことです」

「そうですね。でもそれは無理です。世の中の幸福と不幸は天秤です。どちらかが一方に傾けば、もう一方と吊り合わせる為に、誰かが向こう側に行かなきゃならない」

皆が幸せ、なんて無理だ。

皆が幸福の上皿に乗ろうとしても無駄。

傾き過ぎた天秤の重さに、潰れてしまうだけ。

半分が幸福の上皿に乗るなら、もう片方、不幸の上皿の上にも、同じだけの人が乗らなくては。

そうやって、吊り合いを取るのだ。

誰かの幸福というのはいつだって、誰かの不幸の上に成り立っている。

その幸福の上に更に不幸を乗せて潰し、自分がよじ登ってまた幸福を乗せ。

そんな足の引っ張り合いが、延々と続く。

それが社会ってもんだろうが。