The previous night of the world revolution5~R.D.~

「…?どうした?」

やって来たのは、『青薔薇連合会』の末端構成員だった。

俺の派閥の部下じゃないから、名前は知らないが。

顔くらいは見たことがある。

8名の所属している派閥は、それぞれバラバラだった。

ルルシーの派閥の構成員が代表として、ルルシーのもとにやって来たようだが。

後ろにいるのは、それぞれアイズの部下、アリューシャの部下、そしてシュノさんの部下だった。

大半が俺のハーレム会員から構成されている俺の派閥と、まだ幹部に就任して間もなく、部下が多くないルリシヤの派閥の部下は、いなかった。

派閥がバラバラの構成員が一同に会して、一体何事だ。

大体、末端構成員が何故、直接幹部の部屋にやって来る。

普通は、連絡係や緊急事態でもない限り、末端構成員が幹部の部屋を訪ねることは皆無と言って良い。

何か奏上したいことがあるときは、まずは準幹部…華弦やルヴィアさんを通して、準幹部から幹部に伝えに来るのが慣例だ。

わざわざ末端構成員が徒党を組んで、なんの用だ。

「…お願いがあります」

彼らは、緊張で顔を固くして、ガチガチと歯を震わせんばかりに口を開いた。

「何だ?」

「…我々8名は、『青薔薇連合会』を離反しようと思っています」

「…」

…ほう。

これには、さすがのルルシーも驚きを隠せなかったようで、目を見開いていた。

成程、ルヴィアさんを通さず、直接俺達に言いに来た訳だ。

ルヴィアさんにそんなこと言えば、「馬鹿なこと言うな」と一喝され、絶対に取り次いでもらえなかっただろうから。

「…お前達、何考えてる」

ルルシーは驚きを隠し、冷静な口調で尋ねた。

ルルシーの恩情だな。

『青薔薇連合会』のみならず、マフィアにとって、組織を裏切ることは、すなわち死を意味する。

「離反したい」などと言い出せば、すぐさま撃ち殺されても文句は言えない。

それなのに、ルルシーは即撃ち殺さず、理由を聞くことにしたらしい。

優しいじゃないか。

俺なら即刻首を落としてたな。

ま、俺の派閥の構成員は、ほぼ俺のハーレム会員だから、離反したいなんて言い出すことは有り得ないのだが。

「『青薔薇連合会』を出て、何処に行くつもりだ」

「…足を洗って、真っ当に生きていくつもりです」

「そんなことが出来ると思ってるのか」

一度闇に染まった人間が、光の世界で生きていけると思ってるのか。

俺は無理だね。

絶対無理。

世間が許しても、自分の魂が許さない。

それなのに。

「…出来ます」

彼らは、はっきりとそう答えた。

「何を根拠に?」

「『天の光教』の偉大な教えが…俺達の罪を、許してくださるからです」

「…は?」

ルルシーは思わず、そんな返事をしてしまった。

俺も、同じ気持ちだった。

何言ってんだ、こいつは。

「俺達は『青薔薇連合会』を出て、『天の光教』の敬虔な信徒として生きるつもりです」

「『天の光教』だと…?」

足を洗って、真っ当に生きていたいと言うなら、まだ分からなくもない。

いつだって光の世界は眩しくて、その眩しさに惑わされることもあるだろう。

だが、同じ光でも…宗教の光とは、どういうことだ。

何故、ここで『天の光教』の名前が出てくる。

「…どうやら、インチキ宗教の甘言に騙されてるようですね」

俺は、一歩前に出た。

こいつらは俺の部下ではないのだから、俺がでしゃばるのは間違いかもしれないが。

それでも、敢えて言わせてもらおう。