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私の異様なおとなしさに心配してくれていた友人たちも、
”冬だから食欲が沸いて・・・お腹が空いて力出ない・・・”
と私が誤魔化して一言そう言えば、なんだそんなことかと逆に納得してさほど心配してくれなくなった。ちょっと悲しい。
まあしかし、おとなしくなってしまった理由が同じクラスにいるところで言えるわけがなかった。
逆に心配してくれなくなった方が今は楽かも。
だし、お腹空いて力出ないなんていつものことだし。
みわは私を見るなり、これは恋煩いだと言ってくる。
私はそのたびにこれは呪いだと言い返しているのだけど、みわは”ハイハイ”と言って私の反発には全然相手をしてくれないのだ。
そんなみわは今日これから他校の彼氏と放課後デートをするんだと。
いいなあ~平和で。
このあともう帰るだけになった私は、下駄箱に向かった。
「・・・あ」
思わず声をあげてしまった瞬間、しまったと思った。
下駄箱にもたれかかりながらスマホの画面に視線を落としていた馬渕くんが、私の声に気付きこちらに視線を向けた。
わざわざ声を上げる必要なんかなかったのに、バチっと目が合ってしまっては何か言わないと不自然な状況を作ってしまった。
緊張なのか警戒心なのかよくわからないけど、心臓がドクリドクリと音を立て始めた。
「ぶ、部活は?」
「事情があって今日は開始がちょっと遅いんだ」
「へえ・・・そうなんだ・・・じゃあ、お疲れ、」
スマホを片手に持ったままもたれかかっている馬渕くんの横を通り抜けて、自分の靴を取り出し早急にその場を立ち去ろうとした。
「鈴木さんに用があって」
「え・・・何?」
なんとなく呼び止められるような予感はしていた。
馬渕くんが真面目な顔でこちらを見るもんだから、さらにドキドキと心音が早くなる。
「返事、聞いてないなと思って」
「返事って・・・何の返事?」
ちょっと待って、返事って何?
そもそも返事求められるようなこと、私言われてない。
最近馬渕くんのせいで本来の平和な学校生活も送れていない上にただでさえ24時間悩まされっぱなしなのに、何の返事をすればいいの?
私も馬渕くんみたいなタイプが好きだよって言えばいいの?
そもそも私、馬渕くんのこと、好きじゃないもん。
「ふ、やっぱおもしろいね、鈴木さんって」
「ねえ、バカにしてるよねえ!?」
「いや、そんなつもりないんだけど、ごめんね」
「そんなつもりじゃないなら謝んないでもらっていい!?」
大きな目を崩して声を上げて笑う馬渕くんにハッとして我に返る。
待って、私なんでこんなにムキになってんの。
そして不覚にもこの状況で笑う馬渕くんの姿にドキドキしている私。
こんなに笑顔で、しかも大笑いまでしていただいて、
ああ、馬渕くんってこんな風に笑うんだあ・・・
って、違う違う違う!
そんなことを考えているうちに息を取り戻した馬渕くんと目が合う。
「あ~、ごめん、いや、ごめんじゃないね」
「いや、違うの、私もその・・・いきなり怒ったりしてごめんね」
「んーん。俺鈴木さんのそういうおもしろいところ、好き」
またさらりとそんな爆弾を投下する馬渕くん。
そして、微笑んだ顔の中に光る彼の目は、見るからに目の奥に熱が籠もったような視線を私に向けていて、私はただ声も出せずに馬渕くんの顔を見るしかなかった。
たぶん、すごくアホ面だったと思う。
一体馬渕くんは私をどうしたいんだろう。
そして目の前にいる馬渕くんは真剣な顔をして私に一歩詰め寄った。
「俺、勇希先輩みたいなタイプじゃないけど、彼女のことはすごく大事にするよ」
「へっ、」
「だから、俺と付き合って」
私の異様なおとなしさに心配してくれていた友人たちも、
”冬だから食欲が沸いて・・・お腹が空いて力出ない・・・”
と私が誤魔化して一言そう言えば、なんだそんなことかと逆に納得してさほど心配してくれなくなった。ちょっと悲しい。
まあしかし、おとなしくなってしまった理由が同じクラスにいるところで言えるわけがなかった。
逆に心配してくれなくなった方が今は楽かも。
だし、お腹空いて力出ないなんていつものことだし。
みわは私を見るなり、これは恋煩いだと言ってくる。
私はそのたびにこれは呪いだと言い返しているのだけど、みわは”ハイハイ”と言って私の反発には全然相手をしてくれないのだ。
そんなみわは今日これから他校の彼氏と放課後デートをするんだと。
いいなあ~平和で。
このあともう帰るだけになった私は、下駄箱に向かった。
「・・・あ」
思わず声をあげてしまった瞬間、しまったと思った。
下駄箱にもたれかかりながらスマホの画面に視線を落としていた馬渕くんが、私の声に気付きこちらに視線を向けた。
わざわざ声を上げる必要なんかなかったのに、バチっと目が合ってしまっては何か言わないと不自然な状況を作ってしまった。
緊張なのか警戒心なのかよくわからないけど、心臓がドクリドクリと音を立て始めた。
「ぶ、部活は?」
「事情があって今日は開始がちょっと遅いんだ」
「へえ・・・そうなんだ・・・じゃあ、お疲れ、」
スマホを片手に持ったままもたれかかっている馬渕くんの横を通り抜けて、自分の靴を取り出し早急にその場を立ち去ろうとした。
「鈴木さんに用があって」
「え・・・何?」
なんとなく呼び止められるような予感はしていた。
馬渕くんが真面目な顔でこちらを見るもんだから、さらにドキドキと心音が早くなる。
「返事、聞いてないなと思って」
「返事って・・・何の返事?」
ちょっと待って、返事って何?
そもそも返事求められるようなこと、私言われてない。
最近馬渕くんのせいで本来の平和な学校生活も送れていない上にただでさえ24時間悩まされっぱなしなのに、何の返事をすればいいの?
私も馬渕くんみたいなタイプが好きだよって言えばいいの?
そもそも私、馬渕くんのこと、好きじゃないもん。
「ふ、やっぱおもしろいね、鈴木さんって」
「ねえ、バカにしてるよねえ!?」
「いや、そんなつもりないんだけど、ごめんね」
「そんなつもりじゃないなら謝んないでもらっていい!?」
大きな目を崩して声を上げて笑う馬渕くんにハッとして我に返る。
待って、私なんでこんなにムキになってんの。
そして不覚にもこの状況で笑う馬渕くんの姿にドキドキしている私。
こんなに笑顔で、しかも大笑いまでしていただいて、
ああ、馬渕くんってこんな風に笑うんだあ・・・
って、違う違う違う!
そんなことを考えているうちに息を取り戻した馬渕くんと目が合う。
「あ~、ごめん、いや、ごめんじゃないね」
「いや、違うの、私もその・・・いきなり怒ったりしてごめんね」
「んーん。俺鈴木さんのそういうおもしろいところ、好き」
またさらりとそんな爆弾を投下する馬渕くん。
そして、微笑んだ顔の中に光る彼の目は、見るからに目の奥に熱が籠もったような視線を私に向けていて、私はただ声も出せずに馬渕くんの顔を見るしかなかった。
たぶん、すごくアホ面だったと思う。
一体馬渕くんは私をどうしたいんだろう。
そして目の前にいる馬渕くんは真剣な顔をして私に一歩詰め寄った。
「俺、勇希先輩みたいなタイプじゃないけど、彼女のことはすごく大事にするよ」
「へっ、」
「だから、俺と付き合って」
