とある部活の帰り道、前を歩く天先輩と隼人がスマホゲームで盛り上がっている中、俺は勇希先輩と後ろを歩いていた。




そして俺は一緒に歩いていたその勇希先輩をジッと観察していた。




「・・・何か付いてんのか俺の顔に」


「いや」


「お前最近俺のことやたら観察してね?」


「そうですか?」



そりゃあ、好きな子があんなに大きな声で、

”好きなタイプは勇希先輩”

なんて言うから観察するでしょう。

勇希先輩は中学からの先輩であり、俺とは気が合う先輩なので他の人よりも勇希先輩のことは知っている方だけれど、
鈴木さんが勇希先輩のどんなところがいいのかを、そういえば知らないなと思ったのだ。




「悪ぃけど、俺男には興味ないからな」


「そういうんじゃないです、安心してください。俺も興味ないっす」


「じゃあなんだよ・・・そんなに見られるとさすがに気になるだろうが」


「勇希先輩ってモテますか?」


「あァ?」




訂正。

勇希先輩のことを人よりも知っている方だと言ったけれど、恋沙汰は未知の世界だ。

彼女がいたことはあるのは知っているけど、勇希先輩の当時の彼女はどんな人だったのかも見たことも聞いたことも名前も知らなかったので、勇希先輩が面食いなのかそうでないのかも、どういう人を好きになったのかさえも知らない。




「お前・・・喧嘩売ってるんか」


「気になっただけですよ。勇希先輩、そういうのあんま言わないじゃないすか」


「言う必要がないからな」


「で、どうなんすか」


「何でそんな知りたいんだよ。理由を言え」


「チッ」


「おいコラ舌打ちすんな」



勇希先輩は本当に自分のプライベートの話をしない。
わかってたことだ。
やっぱり普通に聞いても教えてくれないか。仕方ない。


「・・・勇希先輩のことを、タイプだって言う子がいたからです」



勇希先輩の圧により、正直に理由を白状する。
俺がそう言うと、勇希先輩は気怠げな目を見開いた。



「へえ~、誰だそれ。紹介してくれよ」


「はあ?嫌ですよダメです何言ってんすか」


「いや冗談だわ。なんだバブち。必死か?」


「・・・」


「ふっ、墓穴掘ったな。別に俺はそういうのネタにしねえし、まあよくわからんけど精々頑張れや」




もともとそういう話はしない勇希先輩は、それ以上俺には何も聞いてこなかった。


勇希先輩はいつも気怠げで怖そうに見えるけど優しい。
面倒見もいい。
口は悪いけど、その中に優しさがある。
センスの塊だし、男の中の男だと思う。
だから俺は勇希先輩のことを尊敬しているし、憧れてもいる。


けれど勇希先輩は、寝てばっかりだしインドア派だし曲作りが好きすぎてパソコンが恋人だし、もし俺が女だとしたらそんな男とは付き合いたくないと思った。

勇希先輩にそれを言ったらシバかれそうだから絶対に言わないけど。


それを知った上で、鈴木さんは勇希先輩がタイプだと言っているのだろうか。

俺はインドアでもアウトドアでもどっちもいけるし、付き合ったら彼女のことは大切にするし、勇希先輩よりは絶対にいいと思うんだけど。


なんて、勇希先輩を勝手にライバル視し出した俺は、ぼちぼち鈴木さんを自分のものにしたいと思い始めていた。



挙動不審のかわいい鈴木さんのことをずっと見て楽しんでいたけれど、だいぶ俺のことを意識してくれてるみたいだし、そろそろ終わらせようと思う。