やっぱりあの日から鈴木さんはいつも通りの元気さはなく、さすがに周りの友人たちも心配をし出す始末だった。
クラスの俺の友人も、
”鈴木さん最近元気ないよなー。何かあったんかな?”
なんて言っている。
「さあ、なんでだろうね」
その原因が俺だということは、どうやらクラスメイトで知る人は彼女の親友を除けばいないようだ。
俺の方をちらちら見たり、たまに目が合うと即座に逸らされたりするのは継続中だった。
その彼女の様子を見ただけでも、彼女が俺のことを意識しているということが容易にわかって、気分は最高だった。
それにしても毎日のように鈴木さんのことを観察しているのだが、前にも増してかわいくなっているのは気のせいだろうか。
前からずっと好きだったけど、俺が鈴木さんにようやくアクションを起こせたことで、鈴木さん仕草ひとつひとつがかわいく見えて仕方がなかった。
あれ、なんか俺もかなり意識しすぎてない?
「なーバブち、何笑ってんの?」
そんなある日の部活終わり。
通称めんどくさい先輩、天先輩が俺を見るなりそう言った。
「え?何がですか?」
「なんかニヤニヤしてるからさあ!いいことでもあったん?」
あったよ。ありましたとも先輩。
そもそもの話、あの日廊下で天先輩があんなデカい声出してくれたのがきっかけだったんだよね。
今となってはいいアシストだった。
本当はお礼を言いたいところだけど、今それを言ったら好きな人がいることがバレてからかわれること間違いなしなので、まだ言わないでおこう。
「あ!!!!もしかして彼女でもできた!?!?」
「はい???」
「待ってよバブち~聞いてないよ俺~!!!」
「いや、勝手に話進めないでくださいよいないですって」
「なんだあ~!!!先超されたのかと思ったあ~!!!」
と言いながらすごく安心したように床に大の字になった天先輩。
何言ってんですかこの人は。
正直選びたい放題だと思うんですが。
「クラスの女子にね、女の子の趣味変わってそうって言われたんです」
「え、なんで?」
「よく一緒に居る天先輩みたいなめんどくさい子が好きそうって言われました」
「え、待って俺軽くディスられてる?」
それ言ったの誰!?と俺に問い詰める天先輩。
そしてそれを聞いていた、同じ軽音部で同学年である乾隼人がゲラゲラ笑う。普通に先輩に失礼だ。
誰だという質問に答えたら、天先輩が鈴木さんに絡みにいきそうだから絶対に言わないけど。
「蓮助、その子おもしろいな?」
「だよね」
「どんな子なん?」
「そーだよどんな子だよ!?」
と、ゲラゲラ笑っていた隼人と天先輩が興味を示し出し、問い詰める。
まずい、めんどくさい・・・
今俺にとって鈴木さんとはいいところだし、邪魔をされたくない。
「おーい、終わったかー。飯行こうぜ~」
部室のドアを開け、そこに登場した勇希先輩によってなんとかその場を免れたのだった。
