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休日が明けて月曜日。
それはそれは朝から鈴木さんのおもしろさと言ったらもう。
基本的に朝が苦手な俺は、チャイムの鳴るギリギリに教室に入る。
そして俺の現在の席は廊下側の最後部にあるので、いくら教室に人が集まって席に着いていようともすぐにこのクラスに溶け込めるわけで。
だから特に朝一で何かしらのアクションはないと踏んでいた。
いつもならば席に着いた瞬間から、今日のお昼は何を食べようかとか全く関係の無いことを考えながら朝のHRを過ごすのだけど、今日は席に着いてからまず、俺よりも遙か斜め前に座る鈴木さんの姿をとらえた。
よかった。ちゃんと来てる。
これで休まれたら少し焦ったかも。
俺は俺で、いつもならばしんどくて仕方がない今日という月曜日が楽しみだった。
別に気持ちをちゃんと伝えたわけじゃないから俺の気持ちがすべて伝わっているとは思っていないけど、なんだか気持ちがスッキリしていて、今日鈴木さんに会えるのが待ち遠しくて。
そして担任の話に顔も向けず耳も傾けず、ただただ鈴木さんの後頭部を眺めた。
たまに一つに縛ったりしていることがあるけど、今日は髪をおろしていた。かわいい。
こっち向かないかなー、なんて思いながら眺めていたら、俺の願望が伝わったのか、ちらりとこちらに振り返った彼女。
その目線は間違いなく俺に向けられていたけれど、目が合った瞬間すぐに担任に視線が戻され、おろした髪がふわりと揺れた。
まあ、これくらいは想定内。
また振り向かないかなと懲りずに鈴木さんの後頭部を見つめていたら、おろした髪を自身の顔に集めて項垂れ始める。
そのときにチラッと見えた耳が少し赤く染まっているのが見えた。
なんだ、ちゃんと俺のこと意識してんじゃん。
ていうか、あきらかに動揺しすぎだろ。
やばい、ニヤけが止まらない。かわいい。
休み時間や授業中、いろんなタイミングで鈴木さんと目線が交わることがあるも、今日は会話を交わしていない。
俺はあくまでいつも通りに過ごしているし、別に鈴木さんが話しかけてこないなら俺から話すつもりはない。
逆に俺がいつも通りすぎるのか、鈴木さんはそんな俺に不信感を抱いているようで、あのときも一緒に居た芝崎さんに何か小さな声でつぶやいている様子も見て取れた。
いつも教室では割と元気に喋っている彼女があまりにもおとなしいから、周りの友人たちに心配がられているところなんかはもうニヤけが止まらなくなりそうだったなあ。
結局会話がないまま帰りのHRまで終わり、俺はこれから部活に向かおうと荷物をまとめる。
今日も遅くまでかかりそうだな。
あとで売店で夜食でも買っておくか。
今日は絶対にスマホ忘れないぞ、よし。
ポケットにスマホを入れたときだった。
「あ、あの・・・馬渕くん」
きた。
「ん?」
「あの・・・・・・少しだけ、時間あるかな」
「ああ、うん。いいけど」
俺のそばまで来た硬い表情の鈴木さんと、遠くから心配そうに見る芝崎さんが視界に入る。
いつもの元気がない鈴木さんがもじもじとその場に立っている姿がかわいくて、頬が緩みそうだった。
俺はそのまま部活に行けるようにカバンも全て持った状態で鈴木さんのあとについて行く。
こうやって見ると思ったよりも小さいな。
あ、つむじ二つある。
つむじ二つは天才肌なんて聞いたことあるな。
シャンプーの香りもして、やっぱりこの子かわいいな、なんて思っていると、人通りの少ない渡り廊下まで来た。
くるりと鈴木さんが振り返ったので俺も立ち止まる。
勢いよく振り返ったわりにはなかなか口を開かないので、俺はしびれを切らしてわかりきっていることを聞いた。
「何?」
「あー、あのさ・・・この間の、あれ」
「うん、どうしたの?」
「あれは・・・・・・その、どういう意味?ですか・・・」
「そのまんまの意味だけど」
「え、そのまんまの意味って・・・」
「俺、鈴木さんみたいなめんどくさいタイプ、嫌いじゃないよ」
「・・・う、うん、」
「好きな女の子には意地悪したくなっちゃうタイプだし」
「で、でもあれだよ、私別にめんどくさいタイプじゃないし・・・、」
「え、俺鈴木さんのこと好きって言ったっけ」
「・・・!?!?!?」
決して間違っていることは言っていない俺を、顔を真っ赤にしながら見る鈴木さん。
あ~、かわいいなあ。
鈴木さんはいろんな表情があるから、見ていて本当に飽きない。
「あ、あんなこと言われたら勘違いするでしょ誰だって・・・!」
顔は赤いまま、口を尖らせながら彼女はまた目を伏せる。
だから言ったでしょ、俺は好きな子には意地悪したくなっちゃうタイプなんだって。
すると、ポケットにしまってあるスマホが長く震えた。
たぶん天先輩からのいつもの着信だと思う。
「あのさ、鈴木さん」
「うぅ~もう今度は何っ!!」
「俺、もう部活行かなきゃなんだけど、」
「あ、そ、そっか・・・!ごめんね、時間作らせちゃって・・・」
今度は目を丸くさせてハッとした顔をする。
こんなにもコロコロと変わる表情をいつまでもみていたいけれど、部活に行かなければ。
残念だけど、時間切れだ。
「勘違いさせてごめんね」
「ううん、私こそ・・・ごめんね」
「うん、まあ勘違いじゃないんだけどね」
「・・・は!?」
二回目の長いバイブレーションで震えるスマホをポケットから取り出し、耳に当てて天先輩からの電話に出る。
スマホを一瞬耳から離し、”じゃあね”と軽く微笑むと、何か言いたそうにまた顔を真っ赤にして俺の顔を見ていた。
またこれで、鈴木さんの脳内は俺を占める割合が増えることだろう。
もっともっと、俺のこと考えてくれればいいよ。
休日が明けて月曜日。
それはそれは朝から鈴木さんのおもしろさと言ったらもう。
基本的に朝が苦手な俺は、チャイムの鳴るギリギリに教室に入る。
そして俺の現在の席は廊下側の最後部にあるので、いくら教室に人が集まって席に着いていようともすぐにこのクラスに溶け込めるわけで。
だから特に朝一で何かしらのアクションはないと踏んでいた。
いつもならば席に着いた瞬間から、今日のお昼は何を食べようかとか全く関係の無いことを考えながら朝のHRを過ごすのだけど、今日は席に着いてからまず、俺よりも遙か斜め前に座る鈴木さんの姿をとらえた。
よかった。ちゃんと来てる。
これで休まれたら少し焦ったかも。
俺は俺で、いつもならばしんどくて仕方がない今日という月曜日が楽しみだった。
別に気持ちをちゃんと伝えたわけじゃないから俺の気持ちがすべて伝わっているとは思っていないけど、なんだか気持ちがスッキリしていて、今日鈴木さんに会えるのが待ち遠しくて。
そして担任の話に顔も向けず耳も傾けず、ただただ鈴木さんの後頭部を眺めた。
たまに一つに縛ったりしていることがあるけど、今日は髪をおろしていた。かわいい。
こっち向かないかなー、なんて思いながら眺めていたら、俺の願望が伝わったのか、ちらりとこちらに振り返った彼女。
その目線は間違いなく俺に向けられていたけれど、目が合った瞬間すぐに担任に視線が戻され、おろした髪がふわりと揺れた。
まあ、これくらいは想定内。
また振り向かないかなと懲りずに鈴木さんの後頭部を見つめていたら、おろした髪を自身の顔に集めて項垂れ始める。
そのときにチラッと見えた耳が少し赤く染まっているのが見えた。
なんだ、ちゃんと俺のこと意識してんじゃん。
ていうか、あきらかに動揺しすぎだろ。
やばい、ニヤけが止まらない。かわいい。
休み時間や授業中、いろんなタイミングで鈴木さんと目線が交わることがあるも、今日は会話を交わしていない。
俺はあくまでいつも通りに過ごしているし、別に鈴木さんが話しかけてこないなら俺から話すつもりはない。
逆に俺がいつも通りすぎるのか、鈴木さんはそんな俺に不信感を抱いているようで、あのときも一緒に居た芝崎さんに何か小さな声でつぶやいている様子も見て取れた。
いつも教室では割と元気に喋っている彼女があまりにもおとなしいから、周りの友人たちに心配がられているところなんかはもうニヤけが止まらなくなりそうだったなあ。
結局会話がないまま帰りのHRまで終わり、俺はこれから部活に向かおうと荷物をまとめる。
今日も遅くまでかかりそうだな。
あとで売店で夜食でも買っておくか。
今日は絶対にスマホ忘れないぞ、よし。
ポケットにスマホを入れたときだった。
「あ、あの・・・馬渕くん」
きた。
「ん?」
「あの・・・・・・少しだけ、時間あるかな」
「ああ、うん。いいけど」
俺のそばまで来た硬い表情の鈴木さんと、遠くから心配そうに見る芝崎さんが視界に入る。
いつもの元気がない鈴木さんがもじもじとその場に立っている姿がかわいくて、頬が緩みそうだった。
俺はそのまま部活に行けるようにカバンも全て持った状態で鈴木さんのあとについて行く。
こうやって見ると思ったよりも小さいな。
あ、つむじ二つある。
つむじ二つは天才肌なんて聞いたことあるな。
シャンプーの香りもして、やっぱりこの子かわいいな、なんて思っていると、人通りの少ない渡り廊下まで来た。
くるりと鈴木さんが振り返ったので俺も立ち止まる。
勢いよく振り返ったわりにはなかなか口を開かないので、俺はしびれを切らしてわかりきっていることを聞いた。
「何?」
「あー、あのさ・・・この間の、あれ」
「うん、どうしたの?」
「あれは・・・・・・その、どういう意味?ですか・・・」
「そのまんまの意味だけど」
「え、そのまんまの意味って・・・」
「俺、鈴木さんみたいなめんどくさいタイプ、嫌いじゃないよ」
「・・・う、うん、」
「好きな女の子には意地悪したくなっちゃうタイプだし」
「で、でもあれだよ、私別にめんどくさいタイプじゃないし・・・、」
「え、俺鈴木さんのこと好きって言ったっけ」
「・・・!?!?!?」
決して間違っていることは言っていない俺を、顔を真っ赤にしながら見る鈴木さん。
あ~、かわいいなあ。
鈴木さんはいろんな表情があるから、見ていて本当に飽きない。
「あ、あんなこと言われたら勘違いするでしょ誰だって・・・!」
顔は赤いまま、口を尖らせながら彼女はまた目を伏せる。
だから言ったでしょ、俺は好きな子には意地悪したくなっちゃうタイプなんだって。
すると、ポケットにしまってあるスマホが長く震えた。
たぶん天先輩からのいつもの着信だと思う。
「あのさ、鈴木さん」
「うぅ~もう今度は何っ!!」
「俺、もう部活行かなきゃなんだけど、」
「あ、そ、そっか・・・!ごめんね、時間作らせちゃって・・・」
今度は目を丸くさせてハッとした顔をする。
こんなにもコロコロと変わる表情をいつまでもみていたいけれど、部活に行かなければ。
残念だけど、時間切れだ。
「勘違いさせてごめんね」
「ううん、私こそ・・・ごめんね」
「うん、まあ勘違いじゃないんだけどね」
「・・・は!?」
二回目の長いバイブレーションで震えるスマホをポケットから取り出し、耳に当てて天先輩からの電話に出る。
スマホを一瞬耳から離し、”じゃあね”と軽く微笑むと、何か言いたそうにまた顔を真っ赤にして俺の顔を見ていた。
またこれで、鈴木さんの脳内は俺を占める割合が増えることだろう。
もっともっと、俺のこと考えてくれればいいよ。
