「一人でよくがんばったね、恵都」
「うん…もっと褒めてほしい」
「よしよし。それにしてもモテ期だね~恵都さん」
約束の放課後。
洋服を選びながらよしよしと頭をなでてくれるみわ。
自分でも思う、よくがんばった。
けれど、あの佐藤ハルト先輩の顔を見たら、ちゃんと一対一で話をしたのは正解だったと思った。
人は人生で3回のモテ期があると聞いたことがあるけど、私は奇跡的にその1回目を迎えることができているのだろうか。
モテ期ってもっと気持ちが良いものなのかと思っていたけど、思っていたのと全然違う気がする。
「ちゃんとその先輩の告白はごめんなさいってできたんでしょ?そしたらもう次は馬渕くんだね!」
「む、無理だってやっぱり…だってあの馬渕くんだよ…」
「はあ?まだそんなこと言ってんの!?ホント、馬渕くんの言う通りめんどくさいよアナタ」
腹くくりなって!とみわに肩をポンと叩かれるが、やっぱりどうしても馬渕くん相手だと身構えてしまうというか。
ぜひお付き合いしたいという気持ちは日に日に強くなっているけれど、私なんかでいいのか、そもそも私のどこがいいんだろう、
という考えが付きまとって離れないのだ。
恋愛のこととなると、こうもめんどくさいタイプなんだと、私も最近気付いたばかり。
「そんなことより、これよくない!?」
「え、ちょっとそれは露出高いんじゃ…」
「そうかな?こういうの流行りだし絶対似合うと思うんだけど~。じゃあ、こっちは?」
結局センス抜群のみわに見立ててもらって、なんとかフェスに来ていくコーデを完成させたのだ。
こういうの着て行って、馬渕くんどういう反応するだろう。
少しでも、かわいいって思ってくれたらいいなあ…とか。
そして相変わらずどんな状況でもお腹は空く。
ちょうどいい時間にみわが連絡を取り、みわの兄とみわ兄の友達とお店で合流し4人になった。
「みわ兄久しぶり~!」
「恵都久しぶり~!なんかきれいになったんじゃないの?」
「でしょ?恋してんのこの子」
「え、恵都彼氏できた!?」
みわ兄と、私もよく知っているみわ兄友(紛らわしい)と4人で窓際の席に座る。
しかしみわ兄もみわ兄友も久しぶりすぎる。二人とも大学で地元離れちゃったし、5年ぶりくらいかも。
「彼氏はいないけど…」
「ふーん、じゃあ好きなやつでもいるん?青春だなあ」
「その相手の子がさ、すっご~~くイケメンなの!恵都のモテ期といったらもう!」
それから食事中も、みわはここ約2か月に及ぶ私と馬渕くんのことを二人に話し始めた。
これは魔術だと言い切っていた私に対してみわ兄たちはゲラゲラ笑っている。失礼な!私結構本気でそう思ってたんだけど!!
ていうか馬渕くんはじめこの二人も私のことで笑いすぎだと思う。
「まあでも、俺そのバブチくんの好きな子からかいたくなる気持ちわかるかもしれん」
「確かに!相当意識してほしかったんじゃね?その手はなかなか思いつかんかも」
「バブチくんと早く付き合ってさ、俺たちに紹介してよ!」
応援されているのかネタにされているのかよくわからないけど、いつかそんな日が来るのだろうか。
私と馬渕くんが立ち並ぶ姿を想像してみたけどできない…やっぱり、不安のような気持ちがどうしても渦巻く。
馬渕くんのことを考えただけで、胸が高鳴ったり、かと思えばぐるぐると不安な気持ちになったり、何回これを繰り返すんだろう。
やっぱり私って、自分でもめんどくさい女だと思う。
