『おはよ。宿題やった?』
『おはよう。うん、やったよ』
『俺やってない。見せて』
『あってるかわかんないよ、それに私の字汚いし・・・』
『字、綺麗じゃん。見せてー』
登校前からこんなメッセージのやり取りをして気まずくならないのだろうか、彼は。
兄の作った朝食を食べながら、片手でスマホの操作をしていた。
「これ恵都!!食べてるときはスマホいじらない!!!」
「あ、はい!ごめんなさい」
「誰なん、そんな朝からメッセージ送ってくる人は」
「・・・・・・魔術師」
「は??」
「ご馳走様でした」
「え、ちょっと今の何説明せい!!何かの勧誘とか悪質なやり取り!?お兄ちゃん許さんよ!!!」
「ちょっと静かにしよ・・・」
ワーワーと騒ぐ仁くんをなんとかシャットアウトして、仁くんが作ってくれたお弁当を持って家を出発した。
本当、ああいうところは父にそっくりだ。
そういえば朝すごくいいにおいがしたけれど、今日のお弁当は何かなあ・・・
仁くんの作るごはんは最高に美味しいのだ。
そんな今朝の私は混乱に混乱を重ねてもはや冷静になってしまっているのかもしれない。
昨日の放課後、バブちもとい馬渕くんにまさかの告白をされた。
もちろんその時は驚いたし心臓吐くんじゃないかと思ったし、今までにない馬渕くんとの距離間で馬渕くんの綺麗な顔を見て、なんて綺麗な顔なんだろう生まれ変わったら私もこういう男の子になりたいなあとか考えてしまった。
そして何故勇希先輩の名前が出たんだろう。
何故私の推しを知っているんだろう。
とりあえず告白をされた私は馬渕くんに遊ばれているだけだと思ってしまったので、
反射的に”は!?むむむむむむむ無理だよ!!!”とか今考えればひどい返事をしてしまった。
そんな私の失礼な返事に対し、馬渕くんは特に表情を変えないまま、
「じゃあ俺もっとガンガンにアピールしていくから、これから俺のことそういう目で見てみてよ」
と、イケメンにしか許されないような発言をして、ほぼ強制的に連絡先を交換させられ冒頭のやり取りに至る。
昨日の放課後に連絡先を交換したばかりだったのに、昨日の夜に部活終わりの馬渕くんからメッセージが来て、おやすみという挨拶で会話が終わったかと思いきや、今朝もメッセージがきたのだ。
本当だ、ガンガンきてる。ハハハハハハハハハ。
笑い事じゃない。
このあと何て返したらいいんだろう。
っていうかこれから学校で会うのにメッセージのやり取り続けてしまったら気まずくない?
宿題見せる流れなのかなこれ・・・そんなこと教室でされたらきっとざわつくに違いない。
もしかしたら馬渕くんに気がある子だって同じクラスにも同じ学校にもたくさんいるだろうし、無事に殺されて終了だよ。
ど、どうしよう・・・。
結局連絡を返せないまま自分の教室に入って友だちに挨拶をして席に直行。
ああ、どうしよう本当・・・お腹痛くなってきた・・・
席に座ったきり動かない私に、みわが「どしたの」と声をかけてきた。
「あの、実は・・・」
「馬渕おはよ~、早いじゃん今日」
「おはよ」
「!!」
ドカーーーン!!という爆発音が聞こえるくらいに大きく波打った私の心臓。自分でもビックリした。
どうやら先程までメッセージのやり取りをしていたバブちご出勤のようだ。
何の会話をしているか聞かないようにしていたけれど、私の耳はそっちに意識を向けてしまって、みわが本気で私を心配している。
馬渕くんと話していたであろうクラスメイトの男子が、
”仕方ねえな~宿題見せてやるよ、購買のパン2個な”という声が聞こえて、とりあえず一安心した。
クラスメイトの男子、宿題やってきてくれてありがとう・・・。
