8
〇ディミトリン王国の宮殿のロランス王子の執務室
(効果音)扉が開く音。
ロラン 「フロリアーナ、急にどうしたんだい」
フロ「(はぁはぁ言っている)ロランス王子、あなたが婚約破棄なさったと聞きましたので」
ロラン「ああ。水でも飲むかい」
フロ「いいえ」
ロラン「ぼくはラファエラに破棄されたんだ。情けないだろう。笑っていいよ」
フロ「大丈夫ですか」
ロラン「大丈夫だよ。いつかは去っていくとは思っていたけれど、少し、いやだいぶ早かったな」
ソロ「何があったのですか」
ロラン「何もない。何もないのが問題だった。ぼくはラファエラの誕生日を忘れたことがきっかけだけど。つまり、ぼくがおもしろくない男だとわかって、うんざりしたのだろう」
フロ「どうして、フィアンセの誕生日を忘れたの?」
ロラン「どうしてだろうな。何もする気が起きなかった」
フロ「身体の具合は」
ロラン「大丈夫だよ。フロリアーナ、きみはジャン・バスチャンとはいつ結婚するんだい」
フロ「それはないです。婚約をやめてきましたから」
ロラン「えっ、それはなぜ」
フロ「ジャン・バスチャン王子もわかってくれました。王子は心の広い、とてもすばらしい方です」
ロラン「それならば、なおさら。なぜ」
フロ「ロランス、あなたがひとりになられたと聞いたからですよ。わたし、ふたたび、立候補します」
ロラン「何の候補?」
フロ「あなたの妃に決まっています」
ロラン「誰がジャン・バスチャンを振って、こんなぼくに乗り換えるだろうか。彼は大国の跡継ぎで、とても優秀で、その上やさしくて、フロリアーナ、きみのことが大好きなんだよ」
フロ「乗り換えるなんて、言い方がおかしいわ。わたしは騎手ではないですよ」
ロラン「そうだね。すまない」
フロ「ロランスは、わたしが好きですか」
ロラン「うん本当は、リアーナ、きみが大好きだよ。誰よりも大好きだよ」
フロ「早く言ってくれればいいのに」
ロラン「きみの幸せを……」
フロ「わたしの幸せはここ。じゃ、話は決まったじゃないですか」
ロラン「でも婚約破棄された男のもとに嫁ぐなんて、人々は何と言うだろうか」
フロ「わたし、ひとつ特技があります。人の言うことなんか、全然平気。よその人は勝手なことを言うものよ。言いたいことを言わせておけばよいのだわ」
ロラン「リアーナ、このふがいない男のどこがいいんだい。ぼくだと手玉に取れるからかい」
フロ「ひどい言い方。わたしがそんなことを思っていないのは、ご存知でしょう」
ロラン「そうだな。それは悪かった。でも、ぼくにはきみがぼくをこんなに好きでいてくれる理由がわからないんだ」
フロ「実はね、わたしにも、わからないのよ。なぜ、あなたが大好きなのか。ジャン・バスチャン王子と結婚すれば、幸せになれるのは目に見えているのに、なぜロランス王子なんだろうって、何度も思いました」
ロラン「そうだね。ジャン・バスチャンのほうが何10倍もいいよ」
フロ「わたし、小さな頃、まだデブでちびだった頃、同じくデブでちびのロランスのお嫁さんになると決めたのよ。きっとそのことが脳の奥底までしみこんでいるのだわ」
ロラン「子供は何も知らないからね」
フロ「でも、子供は純粋だから、その直感は正しいことが多いわ」
ロラン「ぼくと結婚したとして、何がしたいの。ぼくは国王にもなれないし、かといって、市民にも、農民にもなれない」
フロ「いろんな人々を見て、この世に平穏な日々というものはないと少しはわかっているつもりです。どんなふうに生きても、問題は起きます。それをあなた、ロランスと解決しながら、生きていきたい」
ロラン「それだけ?」
フロ「それに、わたしがちょっとしたことを話せば、あなたは笑ってくれる」
ロラン「ああ」
フロ「ほら、あなたは笑っている。そして、わたしも笑っている」
ロラン「それは、そうだな。ふたりでたくさん笑ったな」
フロ「けんかもしましたね」
ロラン「うん」
フロ「あなたは一回怒って、わたしを噴水に投げ込みましたよね」
ロラン「きみは、ぼくにスープをかけた」
フロ「噴水の水がつめたかったから、わたし、風邪をひいて寝込んだら、あなたは看病をしながら、泣いていたわね」
ロラン「あれは、悪かったよ。えっ、泣いたのを見ていたのかい」
フロ「ええ。だって、あれは仮病でした。心配かけたかったのよ」
ロラン「そうだったのかい。よかった」
フロ「ふふふふ」
ロラン「何で、あんな大げんかをしたのだろうか」
フロ「忘れました(笑う)」
フロ「今度の婚約破棄騒動だって、そのうちに思い出話になります。笑って、いつか、子供たちに話してやりましょうよ」
ロラン「子供たちかい」
フロ「わたし達の子供たちですよ」
ロラン「デブでちびの子供かな」
フロ「わたし達のかわいい子供よ」
〇ディミトリン王国の宮殿のロランス王子の執務室
(効果音)扉が開く音。
ロラン 「フロリアーナ、急にどうしたんだい」
フロ「(はぁはぁ言っている)ロランス王子、あなたが婚約破棄なさったと聞きましたので」
ロラン「ああ。水でも飲むかい」
フロ「いいえ」
ロラン「ぼくはラファエラに破棄されたんだ。情けないだろう。笑っていいよ」
フロ「大丈夫ですか」
ロラン「大丈夫だよ。いつかは去っていくとは思っていたけれど、少し、いやだいぶ早かったな」
ソロ「何があったのですか」
ロラン「何もない。何もないのが問題だった。ぼくはラファエラの誕生日を忘れたことがきっかけだけど。つまり、ぼくがおもしろくない男だとわかって、うんざりしたのだろう」
フロ「どうして、フィアンセの誕生日を忘れたの?」
ロラン「どうしてだろうな。何もする気が起きなかった」
フロ「身体の具合は」
ロラン「大丈夫だよ。フロリアーナ、きみはジャン・バスチャンとはいつ結婚するんだい」
フロ「それはないです。婚約をやめてきましたから」
ロラン「えっ、それはなぜ」
フロ「ジャン・バスチャン王子もわかってくれました。王子は心の広い、とてもすばらしい方です」
ロラン「それならば、なおさら。なぜ」
フロ「ロランス、あなたがひとりになられたと聞いたからですよ。わたし、ふたたび、立候補します」
ロラン「何の候補?」
フロ「あなたの妃に決まっています」
ロラン「誰がジャン・バスチャンを振って、こんなぼくに乗り換えるだろうか。彼は大国の跡継ぎで、とても優秀で、その上やさしくて、フロリアーナ、きみのことが大好きなんだよ」
フロ「乗り換えるなんて、言い方がおかしいわ。わたしは騎手ではないですよ」
ロラン「そうだね。すまない」
フロ「ロランスは、わたしが好きですか」
ロラン「うん本当は、リアーナ、きみが大好きだよ。誰よりも大好きだよ」
フロ「早く言ってくれればいいのに」
ロラン「きみの幸せを……」
フロ「わたしの幸せはここ。じゃ、話は決まったじゃないですか」
ロラン「でも婚約破棄された男のもとに嫁ぐなんて、人々は何と言うだろうか」
フロ「わたし、ひとつ特技があります。人の言うことなんか、全然平気。よその人は勝手なことを言うものよ。言いたいことを言わせておけばよいのだわ」
ロラン「リアーナ、このふがいない男のどこがいいんだい。ぼくだと手玉に取れるからかい」
フロ「ひどい言い方。わたしがそんなことを思っていないのは、ご存知でしょう」
ロラン「そうだな。それは悪かった。でも、ぼくにはきみがぼくをこんなに好きでいてくれる理由がわからないんだ」
フロ「実はね、わたしにも、わからないのよ。なぜ、あなたが大好きなのか。ジャン・バスチャン王子と結婚すれば、幸せになれるのは目に見えているのに、なぜロランス王子なんだろうって、何度も思いました」
ロラン「そうだね。ジャン・バスチャンのほうが何10倍もいいよ」
フロ「わたし、小さな頃、まだデブでちびだった頃、同じくデブでちびのロランスのお嫁さんになると決めたのよ。きっとそのことが脳の奥底までしみこんでいるのだわ」
ロラン「子供は何も知らないからね」
フロ「でも、子供は純粋だから、その直感は正しいことが多いわ」
ロラン「ぼくと結婚したとして、何がしたいの。ぼくは国王にもなれないし、かといって、市民にも、農民にもなれない」
フロ「いろんな人々を見て、この世に平穏な日々というものはないと少しはわかっているつもりです。どんなふうに生きても、問題は起きます。それをあなた、ロランスと解決しながら、生きていきたい」
ロラン「それだけ?」
フロ「それに、わたしがちょっとしたことを話せば、あなたは笑ってくれる」
ロラン「ああ」
フロ「ほら、あなたは笑っている。そして、わたしも笑っている」
ロラン「それは、そうだな。ふたりでたくさん笑ったな」
フロ「けんかもしましたね」
ロラン「うん」
フロ「あなたは一回怒って、わたしを噴水に投げ込みましたよね」
ロラン「きみは、ぼくにスープをかけた」
フロ「噴水の水がつめたかったから、わたし、風邪をひいて寝込んだら、あなたは看病をしながら、泣いていたわね」
ロラン「あれは、悪かったよ。えっ、泣いたのを見ていたのかい」
フロ「ええ。だって、あれは仮病でした。心配かけたかったのよ」
ロラン「そうだったのかい。よかった」
フロ「ふふふふ」
ロラン「何で、あんな大げんかをしたのだろうか」
フロ「忘れました(笑う)」
フロ「今度の婚約破棄騒動だって、そのうちに思い出話になります。笑って、いつか、子供たちに話してやりましょうよ」
ロラン「子供たちかい」
フロ「わたし達の子供たちですよ」
ロラン「デブでちびの子供かな」
フロ「わたし達のかわいい子供よ」
