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〇ロランス王子の書斎(深夜)
NA:
ロランス王子はあの日のことを思い出していた。
その日、彼は王立学校にいて、みんなから憧れられている先輩のジャン・バスチャンの部屋に呼ばれた。
ジャン・バスチャン王子(以後、ジャン)「ロランス王子、一度はきみと話をしたかったんだ。ヨーロッパのこの8王国は共立してやっていかなければならないのだから、親しくなっておかないとね」
ロラン「よろしくお願いします」
ジャン「こちらこそ」
ジャン「ところで、きみはフロリアーナ嬢と付き合っているそうだけれど、親しいのですか」
ロラン「ぼく達は、幼なじみです」
ジャン「それは、なんて羨ましいことだ。でも、幼なじみ以上の関係ではないのですか」
ロラン「いつか結婚できたらと思っています」
ジャン「ああ。あちらも、そう思っていますか」
ロラン「そう思ってくれていると思いますが」
ジャン「それなら、もっと勉強も運動も、がんばらなくてはなりませんねぇ。ロランス王子の成績順位は、下級生の30人中、28位ですよ。ビリではないとしても、これでは恥ずかしいでしょう」
ロラン「すみません。でも、彼女はそういうことは、気にしません」
ジャン「そうですか。ああ。きみは運動も……、得意ではないのですね」
ロラン「すみません」
ジャン「あやまることではないけれど、ちなみに私は、上級クラスの中で、一番です。つまり学校で一番というわけです」
ロラン「はい。知っています」
ジャン「自慢しているのではないです。実は、私はフロリアーナ嬢のお相手として立候補しようと思うのですが、どうでしょうか。それを聞いてみたかったのです」
ロラン「どうしてフロリアーナをご存知なのですか」
ジャン「ずっと前に、森で颯爽として馬に乗っている姿を見かけまして、それ以来です。でも、フロリアーナさまはリカルド王太子の妃になられる方かとばかり思って、遠慮していたのです。でも、王太子が別の方と結婚なさったので、どうしたことかと調べさせたら、あなたととても親しいということがわかりました」
ロラン「ぼく達は、幼なじみです。フロリアーナは、運動は何でもできますが、中でも、乗馬は得意です」
ジャン「知っています。私は、時々、そちらの国に行っていました。彼女の姿を見るために。でも、あきらめていました」
ロラン「そうでしたか」
ジャン「あのかわいらしい姿が忘れられません。ロランス、きみの気持ちはどうなのですか。この私が立候補しても、よろしいですか」
ロラン「何に」
ジャン「告白をしたいのです。彼女にぼくの妃になってもらいたいです」
ロラン「そ、それはジャン・バスチャン王子の自由です」
ジャン「わかりました。でも、その表情を見ると、納得なさっていませんよね。私は揉め事が嫌いなので、ふたりで決闘と言いますか、試合をしませんか。乗馬でも、アーチェリーでも、フェンシングでも、何でもかまいません。スポーツがいやなら、チェスでもよいです。試合をして、負けたほうが身を引く、これでどうですか」
ロラン「どうですかと言われても、ジャン・バスチャン、ぼくがあなたに勝てるものは何もありません」
ジャン「じゃ、ふたりのやったことのないスポーツはどうですか。何も使わず、素手で戦いましょう。拳闘でも、投げ技でも、勝ち負けはなくて、一方がフロリアーナ嬢を諦めるまでやるんです。そうだ、フロリアーナ嬢をご招待しましょう。彼女の前で戦うのです。どれだけ耐えられるかで、どちらの愛が強いか、わかるのではないですか」
ロラン「……わかりました」
NA:
ロランス王子は流れで変な約束したものの、翌朝、校庭にリングが作られている現実を見て、恐れをなして、逃げ帰ってしまったのだ。
追って、ジャン・バスチャン王子から、手紙が届いた。
ジャン(声)「私の不戦勝です」
〇ロランス王子の書斎(深夜)
NA:
ロランス王子はあの日のことを思い出していた。
その日、彼は王立学校にいて、みんなから憧れられている先輩のジャン・バスチャンの部屋に呼ばれた。
ジャン・バスチャン王子(以後、ジャン)「ロランス王子、一度はきみと話をしたかったんだ。ヨーロッパのこの8王国は共立してやっていかなければならないのだから、親しくなっておかないとね」
ロラン「よろしくお願いします」
ジャン「こちらこそ」
ジャン「ところで、きみはフロリアーナ嬢と付き合っているそうだけれど、親しいのですか」
ロラン「ぼく達は、幼なじみです」
ジャン「それは、なんて羨ましいことだ。でも、幼なじみ以上の関係ではないのですか」
ロラン「いつか結婚できたらと思っています」
ジャン「ああ。あちらも、そう思っていますか」
ロラン「そう思ってくれていると思いますが」
ジャン「それなら、もっと勉強も運動も、がんばらなくてはなりませんねぇ。ロランス王子の成績順位は、下級生の30人中、28位ですよ。ビリではないとしても、これでは恥ずかしいでしょう」
ロラン「すみません。でも、彼女はそういうことは、気にしません」
ジャン「そうですか。ああ。きみは運動も……、得意ではないのですね」
ロラン「すみません」
ジャン「あやまることではないけれど、ちなみに私は、上級クラスの中で、一番です。つまり学校で一番というわけです」
ロラン「はい。知っています」
ジャン「自慢しているのではないです。実は、私はフロリアーナ嬢のお相手として立候補しようと思うのですが、どうでしょうか。それを聞いてみたかったのです」
ロラン「どうしてフロリアーナをご存知なのですか」
ジャン「ずっと前に、森で颯爽として馬に乗っている姿を見かけまして、それ以来です。でも、フロリアーナさまはリカルド王太子の妃になられる方かとばかり思って、遠慮していたのです。でも、王太子が別の方と結婚なさったので、どうしたことかと調べさせたら、あなたととても親しいということがわかりました」
ロラン「ぼく達は、幼なじみです。フロリアーナは、運動は何でもできますが、中でも、乗馬は得意です」
ジャン「知っています。私は、時々、そちらの国に行っていました。彼女の姿を見るために。でも、あきらめていました」
ロラン「そうでしたか」
ジャン「あのかわいらしい姿が忘れられません。ロランス、きみの気持ちはどうなのですか。この私が立候補しても、よろしいですか」
ロラン「何に」
ジャン「告白をしたいのです。彼女にぼくの妃になってもらいたいです」
ロラン「そ、それはジャン・バスチャン王子の自由です」
ジャン「わかりました。でも、その表情を見ると、納得なさっていませんよね。私は揉め事が嫌いなので、ふたりで決闘と言いますか、試合をしませんか。乗馬でも、アーチェリーでも、フェンシングでも、何でもかまいません。スポーツがいやなら、チェスでもよいです。試合をして、負けたほうが身を引く、これでどうですか」
ロラン「どうですかと言われても、ジャン・バスチャン、ぼくがあなたに勝てるものは何もありません」
ジャン「じゃ、ふたりのやったことのないスポーツはどうですか。何も使わず、素手で戦いましょう。拳闘でも、投げ技でも、勝ち負けはなくて、一方がフロリアーナ嬢を諦めるまでやるんです。そうだ、フロリアーナ嬢をご招待しましょう。彼女の前で戦うのです。どれだけ耐えられるかで、どちらの愛が強いか、わかるのではないですか」
ロラン「……わかりました」
NA:
ロランス王子は流れで変な約束したものの、翌朝、校庭にリングが作られている現実を見て、恐れをなして、逃げ帰ってしまったのだ。
追って、ジャン・バスチャン王子から、手紙が届いた。
ジャン(声)「私の不戦勝です」
