相手が俺じゃなければ兄貴ももっと感情的に怒ることができるんだろう…。
言ってくれたように大切に思ってくれている俺だからこそ、思い切り出来ないもどかしさと戦っている。
「なんでだ…なんで雨なんだ!お前には沙織さんがいるだろう!どうして…」
「わからない…でも俺の気持ちは変わらない、俺は雨が好きだ」
「黙れっ!!」
両手をテーブルに叩きつけたから食器のぶつかる音が鳴る。
肩で息を吸っている兄貴が近づいてきて、俺の胸ぐらを掴み椅子に座ったままの俺を立ち上がらせる。
勢いがあり椅子が倒れる。
「歩…頼むから、嘘と言ってくれ…頼むっ」
何度も懇願する兄貴の目からは今にも涙が溢れて流れてしまいそうだ。


