すべての愛を君だけに。


家路につきオートロックを開けてエレベーターに乗り込む。


目的の階まで着いたところで廊下を一番奥まで進んだ角部屋に鍵を差し込んで扉を開ける。


…動きが止まる。


廊下とリビングを仕切る扉から消したはずの電気の光が漏れている。


玄関には見なれたヒールの高い靴が乱雑に散らばっていた。


沈む気持ちを抱えながら靴を脱いで散らばったヒールを揃えて並べる。


リビングの扉を開けるとソファーに座っているであろう後頭部が見える。






「あ!歩ー、おかえりー!」


「…沙織」






俺に帰ったのに気づき振り返っては笑顔で駆け寄って抱きついてくる。


いつもはいい香りがするはずなのに今日は異様に酒くさい匂いがした。