わたしは大事にそっとカバンの中に入れて、靴を履いて家を出た。
来た順路を今度は逆に行き、駐車場へと向かう。
ピッと音を立てて歩ちゃんの車が解錠を知らせ光る。
乗り込んでシートベルトを締めていると…。
…コンコンッ。
窓ガラスをノックしている音。
顔を上げるとそこには…。
「沙織先生…」
沙織先生の姿があった。
悪いことなんてひとつもしてないのに心臓が嫌な音をたて、血の気が引いていく。
…どうしよう。
なんて言おう。
わたしがいろいろ考えていると窓が下がって、沙織先生とわたしとを隔てていたものが無くなる。
鼓動が早くなる。


