第二十九章 エピローグ
一年後。灰色の雲が切れて、やわらかな朝日の射す空港のロビー。
壮一郎と涼子は並んで立ち、搭乗口へ向かう手続きの行列を横目に、肩を寄せ合っている。二人の傍らには英盛がいて、深々とキャップをかぶりながらも隠しきれない笑みを浮かべていた。
「ちょっと寂しい気もあるなあ。ま、気が向いたらすぐ帰ってこいよ」
からかい半分の言葉に、涼子は笑顔で頷く。壮一郎は淡々とした表情に見えるが、瞳の奥には"外科医"として新しい挑戦――アメリカの最新医療現場への期待が宿っていた。
「会社のことはしばらく頼む。向こうではさらに忙しくなるだろうが、患者を救うのは日本もアメリカも変わらない。」
そう言う声には一年間で一層の深みが加わり、涼子は誇らしい気持ちで胸を満たす。あの頃の嵐を乗り越え、いまはこうして堂々と歩み出すのだ。
「二人がいなくなると俺も退屈だが……ま、会社のことは任せておけ。」
英盛は冗談めかしながらも、二人を見つめるまなざしは優しい。
搭乗口へ呼びかけるアナウンスが響き、壮一郎と涼子は荷物を確かめ合った。最後に英盛と力強い握手を交わす壮一郎、そして涼子に「またな」と微笑む兄。
こうして、契約結婚という時間を経て磨かれた信頼と家族の絆を胸に、壮一郎と涼子は新天地へ向かうため、出発ゲートを進んでいく。
英盛の見送りの背中が小さくなるたび、未来はさらに輝きを増し、二人を優しく照らしていた。
~fin~
一年後。灰色の雲が切れて、やわらかな朝日の射す空港のロビー。
壮一郎と涼子は並んで立ち、搭乗口へ向かう手続きの行列を横目に、肩を寄せ合っている。二人の傍らには英盛がいて、深々とキャップをかぶりながらも隠しきれない笑みを浮かべていた。
「ちょっと寂しい気もあるなあ。ま、気が向いたらすぐ帰ってこいよ」
からかい半分の言葉に、涼子は笑顔で頷く。壮一郎は淡々とした表情に見えるが、瞳の奥には"外科医"として新しい挑戦――アメリカの最新医療現場への期待が宿っていた。
「会社のことはしばらく頼む。向こうではさらに忙しくなるだろうが、患者を救うのは日本もアメリカも変わらない。」
そう言う声には一年間で一層の深みが加わり、涼子は誇らしい気持ちで胸を満たす。あの頃の嵐を乗り越え、いまはこうして堂々と歩み出すのだ。
「二人がいなくなると俺も退屈だが……ま、会社のことは任せておけ。」
英盛は冗談めかしながらも、二人を見つめるまなざしは優しい。
搭乗口へ呼びかけるアナウンスが響き、壮一郎と涼子は荷物を確かめ合った。最後に英盛と力強い握手を交わす壮一郎、そして涼子に「またな」と微笑む兄。
こうして、契約結婚という時間を経て磨かれた信頼と家族の絆を胸に、壮一郎と涼子は新天地へ向かうため、出発ゲートを進んでいく。
英盛の見送りの背中が小さくなるたび、未来はさらに輝きを増し、二人を優しく照らしていた。
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