世界はそれを愛と呼ぶ




「沙耶は、茉白が大切?」

すると、沙耶は目を瞬かせて。

「大事だよ。この街の人達はみーんな、大切」

「皆か」

「うん。……だから、自分が許せないの」

「……そうか」

相馬は肯定も、否定もするつもりはなかった。
彼女がそう思うならば、それでいい。
彼女の悲劇を、実現させなければ良いだけの話だ。

横抱きをしていたから、良い位置に沙耶の頭があって。
コツン、と、何となくぶつけると、熱があるせいかテンションの高い沙耶は楽しそうにくすくす笑って。

「相馬はさ」

「ん?」

「人を愛するって、なんだと思う?」

沙耶は相馬に身を任せながら、不安げに呟く。

「両親を見ているとさ、結婚っていいなって思うの。茉白達も、お兄ちゃん達も幸せそうで、でも、私に待っていた結婚はそんなキラキラしてなくて、相馬がいなかったら私、今もずっと─……」

「─馬鹿。訪れなかった未来を思って、苦しむな」

人に弱音を見せることが苦手で、今もなお、家族に何かを言い出すのに時間を要する沙耶は何故か、相馬にだけは何でも話せるのだと、嬉しそうに言う。

そして、健斗さんのあの日の変な態度は、沙耶が眠ったことにあるらしい。沙耶は幼い頃、朝陽さんたちが帰らぬ人になってから、ずっと、誰かの前で眠らなくなった。

いつもにこにこ、自分の存在をないように扱って、構おうとすれば、激しく拒絶していなくなる。

自分の存在が、誰かの害になることを恐れてる。

「……ごめんね、相馬」

「どうした」

「初対面の時から、迷惑ばかり」

「……」

「お父さん達が、変なことを頼んだんだと思う。相馬は御園の当主で、私達の、ううん、私の問題に構ってばかりいられないだろうに、こうやって今みたいに私のことを心配してくれて……本当にごめんね」

彼女が心を許してくれていることは、すごく伝わってくる。伝わってくるからこそ、彼女の心に寄り添いたいと願うし、相馬も救われるような心地がする。

御園の人間にとって、運命というものは唯一無二だ。
その相手の存在が、自身の命運を握ると言えるほどの存在だからか、相馬は沙耶を放っておけない。