「……眠れないの」
彼女は笑顔から一転、悲しそうな顔で呟いた。
(報告はよく眠っていた、と。彼女らは相馬に嘘をつくことは出来ないだから、それは嘘ではない。でも、沙耶が話すことも嘘であるはずがない)
「……夢か?」
そう尋ねると、小さく頷く。
「弱くて、ダメだね」
そして、微笑むその姿は本当に弱々しくて、ずっと張り詰めていた糸が切れて、もうどうしようもない状態なのだと察し、相馬は迷わず、沙耶を抱き上げた。
「わっ、そ、相馬っ!?」
「寝よう」
「えぇっ?」
「お前の部屋でいいか?」
「ちょっ、ちょっと待って」
「うん?」
「私、歩けるんだけど」
「こっちの方が早いだろ」
「それはそうだけども!」
相馬のマンションより、沙耶の家の方が近い。
そう思いながら、勇真さんの病院裏口から出る。
「というか、相馬はこんな所で何してたの?」
「櫂と茉白と話してた」
「ふたりと?」
「櫂は幼なじみだからな。沙耶には言っておくが、櫂の本明が別にあって。ふたりが結婚するならば、その辺の情報共有が大事だろう?茉白との交流も含めて話していたが、なんか良い雰囲気になって気まずくなったから出てきた」
「ああ……」
話している最中に仲良くし始める恋人、または夫婦に思い当たりがあるらしい沙耶は思い出し笑いをした。
「というか、櫂って別に名前があるんだ?」
「あるある。あと、この街に弟がいる」
「へぇ……聞いたら、教えてくれるかな」
「櫂に興味が?」
「だって、茉白の好きな人だもん」
……そういえば、茉白が知らないところで茉白の命を繋ぎ止めるため、沙耶が尽力していた話を聞いた。
彼女は特別な血液だというから、勿論、沙耶も─……。


