「─単刀直入に聞かせて欲しいんだが」
彼女はそう言った後、咳払いをして。
「慣れないな……」
少し不満げに唇を尖らせた。
「─ゆっくりでいい。どんな君でも、僕は嫌いにならない」
そんな彼女の頭を撫でながら、反対の手でココアを出してくるこの男が、あの幼なじみとは本当に考え難いが、いちいち驚いていては身が持たないと、相馬は流すことにした。
「ほら、あの日、ぼ…私が取り乱して、ちゃんと約束の話を出来なかったでしょう?」
「約束……ああ」
「様子を見ていた感じ、かなり重大なことになっている気がしてね。櫂にお願いしたんだ」
「なるほど」
相馬は差し出されたコーヒーを飲みながら、櫂を見た。
「─話は是非、聞かせてもらいたいが。櫂、お前、彼女に自分の本当の名前は告げたんだろうな?」
「……」
「その無言は、どっちだ」
そう聞くと、彼女は
「えっ、君、名前が別にあるのかい」
と、素直に驚いて、
「あ……んんっ、」
慌てて咳払いして、
「君に本当の名前というものがあるのなら、教えて欲しい…なぁって、思うよ」
かなり難しいのか、口調を戻すことにはかなり苦戦しているらしい。
そんな彼女を優しく目を細めて見つめている姿が、既に嵐が来るのではないかと思うくらい、相馬からすれば衝撃的だが、それは置いておいて。
「櫂」
「今日も彼女は愛らしい。それで良いだろう」
「……結婚するんだよな?」
「勿論。今更、逃がすわけないだろう」
「おまえな……」
相変わらず、自由人である。
彼女も相当だとは聞いていたが、こいつは……。
「俺は、いつまでお前に合わせれば良いんだ。完全にお前の弟はお前のせいでタイミングを見失って、挨拶出来なくなってるんだが」
「……放っておいて良い」
「いやいやいやいや」
彼女はひとり、置いてけぼり。
そんな彼女を抱き寄せて、むうっとむくれる姿を見ると、本当に変わりすぎて、おじさんやおばさんは寝込むんじゃないだろうかと思ってしまう。


