世界はそれを愛と呼ぶ

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“お前は大人しくしておけ”─そう言われて、微笑んだ茉白は、“先生”とふたり、観客に回った。

代わりに説明するのは、幹部四人─主に、千春らしい。

それを眺めながら、特にやることもない結は話を黙って聞いている彼の姿を眺めることにした。

『結』

物心がついた時、既に手には武器があった。
それが当たり前で、怖いとかいう感情も分からなかった。

ただ、人がどこをどのようにどうすればどうなるのか。
それだけは理解していて、任務の為ならば、この身体のどこが欠損しても何も思わなかった。

『あんた、また腹と手の平に穴開けて。その血のおかげで助かってんだから、もう少し慎重にしなさいよ』

文句を垂れながら、手当してくれた人。
結とは違う、純血たる彼女は組織のトップに当たる人物で、自分にも他人にも厳しい人だった。

そんな彼女との思い出は、まるでカメラロールに保存されている写真のように残っているだけで、それに残る思い出はよく分からない。

写真を見れば、否、見なくても思い出せる彼女の声、笑顔、涙─……そんな何もかもを眺め、ひとふた言口にしては、優しく泣きそうな顔でこちらを見る彼女。

『結!あんたね!』

『寝れば治る』

『治るか!阿呆!』

頭が良かった。学校には行かなかった。
容姿も良かったらしい。でも、恋愛しなかった。
健康ではなかった。でも、仲間の健康には煩かった。
破天荒だった。一週間に一回、仲間のバイクを海に沈めていたし、喧嘩していた。

完璧だった。任務は美しく、怪我ひとつなく帰ってくる姿は全員の憧れで、同時に、終わりが分からない結を止めてくれる唯一の人間でもあった。

そんな彼女が、恋をした。
涙を流し、苦しんでいた。
それ以上に幸せそうで、だからこそ。

『私には似ないで……』

泣きながら、お腹を抱え込む姿を覚えている。
─彼女は別れを告げたばかりで、妊娠が発覚した。

相手は一般人の医者家系の男で、優しく、柚希を本気で愛していて、そんな男の元に柚希は娘を置き去りにした。

幸せに、平穏に、安全な場所で生きて欲しいと。

そんな彼女が死ぬ間際、孤独で終えようとした人生の中、捨てたはずの相手に見つけ出された。

それは、警告だった。
ふたりの娘を狙う人間がいて、その脅しを受けて、娘が目覚めてしまったらしい。

久しぶりに見た、彼女の娘は髪色以外、彼女に瓜二つであり、彼女は絶望していた。

でも、その娘は逆境に強く、彼女と共に戦い抜いた。
その強さ、諦めの悪さとか、そういうものを娘に引き継がせた男は、最期まで彼女を諦めず。

最期は満身創痍の中、娘だけを逃がして、ふたりは。