世界はそれを愛と呼ぶ




「……彼女を守れなかった俺達を、恨んでいますか」

「ううん。それは全く」

御園の分家であり、御園の裏の仕事をしてくれていた家。
最期は、敵と差し違えて消えていった彼女。

即座に否定した結は振り返り、彼らの笑い合う姿を見ながら。

「一生、理解できないと思ってたんだよ。柚希が語る、子どもが幸せに笑う世界、なんて。親に愛されることなんて当たり前じゃない、争いの尽きないこの世界で、あの光景が見れる日に俺がここにいるのは、君たちのおかげ。それに、柚希は永くなかった。君達のように強くは無いから」

「……」

「本人は大満足だと思うよ〜?君を見ることはなかったけど、柚希が君を見たら、泣くと思う」

「そうですか?」

「自覚あるんでしょ、当主様」

相馬は微笑んで、肯定も否定もしなかった。

─母親に愛されなかった理由を、最近、考える。

暫くすると、結は彼らに呼ばれて離れていく。

「兄さん」

場を理解して黙っていた双子は、こちらを心配そうに見るので、両手でそれぞれの頭を撫でた。

「─ん〜?どした」

「俺は、兄さんを真っ直ぐに愛してくれる人とじゃないと、結婚を認めないからね」

「なんだいきなり」

「水樹の言葉に、全面同意。俺も、兄さんを、兄さんだけを、死ぬまで愛してくれる人じゃないと嫌」

真っ直ぐな瞳。
両親を奪った相馬を、真っ直ぐ慕ってくれる双子達。

「……ありがとな」

双子の気持ちは嬉しい。
でも、それで十分なんだ。これ以上、望まない。
愛する相手など、どうでも良い。

「相馬」

櫂に呼ばれて、立ち上がる。

「ちょっと行ってくる」

そう言い残して、背中を向けた後ろで。

「─誰かの命を奪えないくらい、優しい人なのに」

「兄さんだって、人を愛していいのに」


双子が呟いた言葉を、相馬は聞こえないフリをした。