世界はそれを愛と呼ぶ




「ねぇ」

「何だ?」

「君、沙耶のことが好きなの?」

唐突にぶっ込まれた言葉に、黙っていた双子が噎せた。

「それとも、運命とか……そういう、一時的な衝動?」

探るような瞳。思わず、相馬は笑ってしまう。

「何」

相馬の思いもよらない反応に、少しムッとした顔。
人間らしくなった一方、まだ幼さは抜けきれない彼がこの街で大切なものを見つけられて、本当に良かった。

「……想像以上に、この街があなたにとって居心地が良い場所だと感じて、つい」

「どういうこと」

「色々な人から話を聞いています。貴方と、彼女の話」

「ああ……そういや、そろそろ墓参りに行かなきゃ。供えるものも考えなきゃ。あいつが好きなものなんだっけ」

彼を弟のように可愛がり、手を引いた彼女。
愛する人と共に、業火に消えた。

「今の、貴方の感情に近いです」

「え?……ああ、沙耶?」

自分で振っておいて、すぐ忘れるところが彼らしい。
人の気持ちを、感情を、心の揺れを理解できない人だから、例えが必要だと聞いていた相馬は微笑んで。

「貴方が恋では無いと断定した、彼女への愛。それに近しいものですよ。ただ守りたいと願っている。それを運命と、衝動と呼ぶならば、そうでしょう」

「?、沙耶と結婚してくれるの?」

「互いに恋愛感情を持つ結婚、というものは、基本、御園家の当主に求められてもいませんし、褒められたものでもありません。ですが、沙耶はそれが可能でしょう。だから、俺じゃなくても」

「?、つまり、君は別に沙耶と結婚しても良いってこと?」

そう言われて、相馬は少し考えた。
幼なじみ以外には拒絶反応がなかった相手は、沙耶が初めてであり、多分、それも産まれる前から定められた運命、番の本能によるものだと思いつつ。

「俺は構いませんよ」

「ふーん?」

「ただ、繰り返しますが。御園家の当主に、恋愛結婚は褒められたものではありません」

「君の祖父母はそうじゃん。伯父達も」

「そうですね」

「それは許せるの?」

「本能なので」

「……便利な言い訳だねぇ」

腹は立たない。理解されるものでもない。

「それで、苦しくないの」

「俺は」

「柚希(ユズキ)は苦しそうだったよ」

「……」

業火に消えた彼女を想い、彼は遠い目をする。
鬼の血を強く引く家に生まれた、最後の当主。