「……ご飯、食べよう?」
とっくに部屋にたどり着き、目の前にある扉。
それを見て、沙耶は微笑む。
相馬が手を差し出せば、その手に触れる。
「うん」
死んでしまえれば、そもそも、生まれて来なければ。
何千、何万と考えてきた人生。
まだ20年も経たないこの日々の中で、
出会ったばかりの沙耶に感じる安心感。
(それは、俺しか抱いていないもの……)
沙耶は感じることがない、焦がれる感情。
(相変わらず、厄介な本能だな……)
化け物としての欲求を優先し、人間社会の理など完全に無視して、ああ、本当に。
「すっごい、広い……一人暮らし……?」
「うん。広いけど、まぁ、2部屋をぶち抜いてるから」
「2部屋?」
「ああ。この下の階、全部、幼なじみ達の家だからさ。このマンション全部、御園のもの。各階2部屋ずつ……最上階、隠し部屋?ではないけど、真正面からは辿り着けないようになっているここは、下の階の2部屋分を1部屋として作ってもらったんだ」
「これなら、その1部屋も広いだろうねぇ……」
「各部屋3LDKで作らせたが」
「各部屋3LDK!?じゃあ、ここは」
「最初、6LDKになる予定だった。けど、1人でそんなに部屋入らねぇだろ?だから、1部屋をぶち抜いて、元々あったウォークインクローゼットと合わせて、広いウォークインクローゼットにした。んで、1部屋を執務室、1部屋を寝室、1部屋を書庫、1部屋を客用寝室、1部屋余ってる」
「余っ……」
「人を招くなら、ゲストルームにしてもいいが……これまでの人生、自分のテリトリーに兄弟ですら入れたことがないからなあ」
「………………え?」
家業の影響か、部屋の作りに興味津々な沙耶に色々と話していると、沙耶が固まる。


