世界はそれを愛と呼ぶ




「言う!言うから!!」

「いや、これでだいたい……」

「めちゃくちゃな事ばかりしてるけど、私にもまだ羞恥心はあるから!」

沙耶がそう騒ぐので降ろしたら、彼女が耳を貸すように求めてきたから、身を屈める。
囁かれた数字に、相馬は1度、頭の回転が止まった気がした。

「……あ、あくまで、向こうから帰ってきて測ったやつだからね?数ヶ月前だよ??」

「いや、変わってないだろ……というか、悪化してないか?それ、痩せすぎだろ」

「勇真兄にもしっかり怒られてるから。BMIをとりあえずあげろって……身長はこれ以上伸びないだろうから、体重を増やすしかないんだけど」

「身長何センチ」

「165、かな。今は」

「……死ぬぞ、お前」

「分かってるよ……」

さっきの体重を思い浮かべて、ざっと計算しても、BMI17……ギリギリすぎる。

「医学的にヤバいってことは理解してるよ。お母さんも心配だけど、いや、私のせいでめちゃくちゃ痩せたことは分かってるけどね?でも、ほら、うん………………ごめん、食べます。食べる。なんか食べよう」

しばらく考え込んだあと、自分の健康や安全が、母親の生死に関わってくることを思い出したのか、沙耶は自分を納得させ始めた。

少し可哀想な気もするが、13歳の平均体重は普通に問題がある。身長が適当であれば、あと10cm以上低ければ、特に問題はなかったのかもしれない。

所詮、体重なんて数字だし。だが、沙耶の場合は遺伝子的な問題で、普通に高身長の部類だ。

それでその体重は、周囲が心配しても仕方がない。

「……相馬は何センチなの?」

「え、去年測った時は179?」

「高いね」

「でも、多分、伸びてる。182くらいじゃないか?今」

「じゃあ、お兄ちゃん達よりはちょっと高いのか」

「多分?」

見下ろすほどはないが、少し自分の方が高い自覚はある。
勿論、その身長なので、余裕で沙耶は見下ろすが。

「沙耶」

「なーにー」

「昼飯、食べに来るか。作るぞ」

「えっ、誰が」

「俺」

「作れるの!?お金持ちなのに!?」

「馬鹿にしてんのか……作れるよ」

「馬鹿にはしてないけど!料理とかしなさそうなのに」

「まぁ、色々とあってな。じゃあ、家に行こう」

「お邪魔していいの?」

「沙耶ならいいよ」

「やったー!これで報告出来るね」

「ひとりでも食べろよ」

「ちょっと、それは……」

意地でも食事を用意しようとする家族の苦労を思うと、この彼女の適当さゆえなんだろうな、と、少しばかりの同情を抱く。

同時に、母親の影響や自分自身の立場などから、相馬は基本、自分のスペースに他人が入るのを許せない。

本家の自室ですら、兄弟すら入らないほど。
(執務室は遠慮なく入ってくるけど)

そんな自分が、兄弟ですら1度も招いたことがない家に人を容易に招き入れるという奇跡に気付いたのは、家に着いてから。

それも、番という本能ゆえなのかと少し恐ろしくなりつつ、沙耶と一緒にエレベーターに乗り込む。