世界はそれを愛と呼ぶ

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「─ばっっっかじゃないの!!??」

目の前で、沙耶が張り倒されている。
思いっきりの張り手をその頬に受けた沙耶は、

「流石、変わらないね。柚香(ユカ)……」

と、苦笑いしながら、ソファーに座り込む。

そして、その光景を見せられる御園三兄弟。

「まさか、学校見学に行ったらいるなんて」

「いるなんてって何!?いなかったら、新学期まで連絡しない気だったわけ!?」

「違うけど〜!」

─場所は、生徒会室。
学校の生徒会長であるという彼女……月島柚香はめちゃくちゃに怒っていた。

「柚香、柚香、相馬達の前だよ」

「関係ない!」

「あるある!関係あるって!生徒会長でしょ!!」

「そんな、気づけば選ばれていただけだし!」

入学してすぐ、生徒会長に選ばれた彼女は今年で2年目。
このままの流れで卒業するまで生徒会長をやらされそうだと、辟易とした顔で語り、自己紹介をしてくれた彼女は御園三兄弟の後ろに隠れていた沙耶を見つけた途端、豹変した。

沙耶は珍しく怯え、彼女をなだめているが、彼女は治まる様子はなく。

「─おー、予想通り」

そんな2人に置いてけぼりにされている俺達の後ろから現れた、先程、担任として紹介された男は笑っている。

「……いつも、あんな感じですか?」

「うん。昔から。第二の小栗って言われてる」

その一言に、彼女が生徒会長に祭り上げられた理由が全て詰まっている気がして、相馬は笑ってしまう。

因みに、小栗はハルさん─大樹さんの妻であり、彼らの幼なじみである小栗心春さんのことである。

彼女は名前からハルと呼ばれているが、実際に春のような暖かな存在であり、その全てで黒橋家に陽だまりを添えてくれていた存在だという。

そして、狂犬とされた大樹さんは勿論、不良という不良の頂点に立つとされる勇真さんも彼女の言うことには逆らえず、彼女を慕っているため、学生時代、ハルさんは『姫』と呼ばれていたらしい。

「黒橋、あ、妹の方も、その他のちょっとヤンチャな人間も全員、月島には逆らわん。俺達は大助かりだ」

「え、そんなに怖いんですか?」

「怖いというより……なんて言うんだろうなぁ?本能的に?いや、んー、一番は一言で黒橋家を動かすことが容易だから、だろうな。小栗も月島も敵には回したくないが、結局は女ってことで舐められることもある。でも、その際、あいつらは無理せずに最終手段を取る。淡々と状況を説明する姿は何とも言えないが、ある意味、敵にとっては彼女らが最後の希望、だな。彼女達に諌められた時点で止まっていれば、平和に終わることが出来るのだから」

その地獄絵図を何度も目にしてきたという担任は、2人の喧嘩を優しい目で見つめている。