「……朝陽が、何かを知っているの?」
震える声。揺れる視界。彼女の大切な、家族。
『わからない。ただ、麗良は朝陽の写真を大切に見てた。最期まで守ってくれた人にそっくり、って。……よく意味は分からないけど、私は沙耶を守る為にここに来たの』
フィーはそう言いながら、ユイラさんの前にしゃがむ。
『貴女の大切なものを、必ず守ります。そして、貴女のお母様であるセイラ様の遺骨を探しだす。……私も直接はお会いしたことないけれど、ユイラさん、貴方に逢えたら、ひとつだけ伝えようと思っていました』
言語を英語に変え、微笑むフィー。
英語なら聞き取ることが出来るユイラさんは、彼女が英語で『わからない』と、正直に伝えてきたことで、少し息を付けたのか、大人しく、その手をフィーに預ける。
『─……貴女のお母様であるセイラは、貴女を心から愛する存在です。何があっても、どんな理由があったとしても、マフィアの家の中で生まれ育ったにも関わらず、彼女は優しさを失わない御方でした。どうか、それだけは知っておいて欲しいです。貴女は望まれて、産まれてきた』
言い切ると、フィーは頭を下げる。
『守れなくて、守りに来れなくて、助けてあげられなくて、ごめんなさい。……そう、麗良さんが』
ユイラさんは目を瞬かせて、そして。
『……っ、そう、そうなの』
『─あなたを愛しているわ。必ず、会いに行きます。その時は、貴女をめいいっぱい抱き締めさせてね。という伝言も預かっています』
そう言いながら、フィーはユイラさんを抱き締める。
そんな言葉で終わっていいはずがないくらい、彼女は惨憺な日々を過ごしてきた。
でもそんな言葉で許してしまえるほど、彼女達は互いに何も悪くないのだ。
ちょっとした愛から生まれた悲劇は、
多くのものを巻き込んで、不幸を齎した。
すれ違い、それでもその中でも残り続けた愛はひとりの少女を巻き込んで、日々に陰りを落としていく。


