世界はそれを愛と呼ぶ




『……沙耶に、そっくり』

『ね?』

まるで、沙耶がそこにいるかのよう。
沙耶と写真の彼女との違いを強いて言うなら、表情筋の問題だろう。沙耶とは違い、にこにこ笑う姿は元気いっぱいや印象を受ける。

健斗さん達にも見せると、絶句。
─まさか、こんなに似てるとは。

「彼女が……?」

ユイラさんが口元を押さえながら、相馬を見る。
相馬は頷いて。

「彼女達が、ユイラさんの祖母らしいです。─運命のようですが、特に指し示したわけではなく、二人の親友の子ども同士がくっついて、あなた方が産まれたようです」

「御名前は……麗良さんと、妃さん」

「西園寺麗良か」

「ええ、そうです」

問題の廃墟が西園寺家のものであることは把握済らしい健斗さんはため息混じりに、ユイラさんの頭を撫でて。

「─それで?」

「……」

「それが今更、何になる。過去にあった惨劇が、何故、俺の娘を襲うんだ。俺への復讐か?廃墟での実験を見て見ぬふりをしていた男を始末し、全てを作り直した、俺への」

─……そう、あまりにも話がおかしい。
沙耶の件がなくても、ユイラさん達が存在している時点で、相手方は動いてもおかしくないのに。

何故、敢えて、沙耶なのだろう。
……確かに、ユイラさんはまともな人生を歩んでいない。
普通の子供のように愛されていたわけでも、学校に通った経験がある訳でもなく、常に凍え、空腹と戦い、大人によって辱められるような、そんな、常に死と隣り合わせの日々を過ごし、健斗さんと出会って、人として生きる喜びを、誰かを愛し愛されることを、温もりを知った人。

だから、標的を変えた?健斗さんに守られているユイラさんには、手を出せないから?

健斗さんからの問いかけに、フィーは困った顔。

『……聞かれても、私は昔の話しか知らないわ』

困った顔で、視線を落として。

『ただ、ユイラの祖父・紀一を愛した黒田さんは、その妻となった妃に固執した。同じ見た目、同じ声音、同じ成績、同じ人生……成り代わるように演じてなお、彼は黒田さんを見なかったと聞いているわ』

「……」

“狂気的”─その言葉が、なんて相応しいのだろう。

『妃を守る為、紀一は妃卒業後、すぐに結婚したの。でも、そんなことは認められなかった。西園寺家は妃の実家を守ったわ。そうしたら、西園寺家の当主が死んだ。そして、その娘の麗良が行方不明になって─……そこからは、何も知らないの。だって、麗良とヴィーから聞いた話だもの。麗良は妃がいつ亡くなったのか、それすら知らない。私も知らない。ヴィーも知らない。そして、沙耶も知らなかった。ただ、朝陽?という人が遺したものに挟まっていたこの写真と、そこに記された記録を見て、彼女は向こうまで渡ってきたの』

ユイラさんは彼女の言葉を聞きながら、写真を握る。