世界はそれを愛と呼ぶ




「けど、数日後、朝陽は俺に頭を下げた。俺の提案を呑むといい、アイラと結婚する道を選んだ。勿論、形だけの婚約。婚姻届すら、俺は2人に出しに行ってもらったほど。朝陽が藤島さんに何かを言われたのは知ってるが、その内容まではわからないまま、朝陽は居なくなった」

あの時、朝陽を藤島家から追い出したのは。
話の流れからしたら、藤島さんだろう。
しかし、藤島さんは二人の交際を反対した結果、健斗さんを会社に招くことになったはずだ。

「─沙耶、寝たよ」

死人に口なし。朝陽さん亡き今、そのあたりの心情は本人に直接聞くしかないのかもしれない……と思っていると、フィーが階段を降りてきた。

「今、お話ししてるんでしょう?どのこと?西園寺家?その地下室?それとも、沙耶の手紙の件?」

目を瞬かせながら、にっこりと微笑むフィー。
勿論、皆は少し警戒気味で、その中でもフィーは気にせず、話を進める。

「沙耶からどこまで聞いたの?沙耶と私の関係わかる?」

日本語ペラペラでも、文法や敬語は不得意。
本人は誰も何も言わないので、自分の話し方が余っ程なのか、と、不安げに相馬を見た。

「……いや、今の君、かなり怪しいから。フィー」

少し悩んで、教える。すると、彼女は。

「あや、しい」

『今の君は娘と共に急に家に入ってきて、当たり前の顔で話に交じってきた不審者だよ』

首を傾げてしまったので、相馬はイタリア語で伝える。
すると、彼女は「!」とした顔をして。

「ごめんなさい!」

と、元気よく謝罪した。

『本当にごめんなさい。そうよね。私、かなりの不審者だわ。でも、私の存在は価値があるから』

慌てているのか、イタリア語の早口。
勿論、聞き取れるのは相馬と健斗さんだけ。

健斗さんが頷いて、簡易的に訳すと、また、彼女は自分の失態に気付いたらしく、

「ごめんなさい〜!」

と、悲しそうに言った。