世界はそれを愛と呼ぶ




「え、犯罪を犯した方じゃないよね」

勇真さんが突っ込むと、

「それだと、本当に話が早かったが……残念ながら、救った方だな。犯した方はすぐに消された」

と、ふぅ、と、ため息をつく健斗さん。

“残念ながら”など、それがなければ、健斗さんはここにいないのに。─なんて思いながらも、それは口にするべき言葉では無く、殺してしまいたいと、実親に言われた時の感情は、相馬はこの場の誰よりも知っている。
だから、余計なことは言わない。

─それに何より、こういう場合は。

「……どうした、ユイラ」

健斗さんの投げやりの言葉に、身を寄せるユイラさん。
ユイラさんが話で怖くなったのかと、気遣う健斗さんに、彼女は悲しそうな目で。

「私の大好きな、大切な人を、いなくても良かった、みたいに言わないで」

「……」

「健斗に色々と思うことがあるのはわかるけど、嫌……嫌だよ、健斗」

愛妻からの言葉は、直接、彼の心に届く。

「……うん。ごめん、配慮が足らんかったな」

健斗さんは気づき、そっと、愛妻を抱き寄せた。

「二度と言わん。約束するから。な?」

小さく頷いたユイラさんは、健斗さんに抱き締められたことで落ち着き、健斗さんに話の続きを促す。

過去の影響から不安定な彼女は、少しのことで簡単に崩れる。壊れてしまう。
そんな彼女を取り戻せるのは、健斗さんだけ。

互いに唯一無二なふたりは、互いが全て。

「─助けた父は、母を匿った。ただの慈善として。母が安心して過ごせる環境を作り、母の身を慮り、母に不要に近付かず、いつか、出て行けるように」

「でも」

「そう。─母が、父に惹かれたらしい。そうして、父は元々、母に惹かれていた関係で、結婚した。父の愛は重く、潰されそうな日々だったけど、とても幸せだったと、母は言っていたよ。父は虐待されて育ち、愛された経験もないから、余計に母の愛が身に染みて、幸せに不慣れだったからこそ、産まれた俺にもどう接していいのか分からず、戸惑った顔をしていたことは覚えてる」

はぁ、と、嫌そうなため息。
でも、理解はしているだろう、その瞳。