世界はそれを愛と呼ぶ




「……ねぇ、沙耶」

「?」

「死んじゃダメだよ」

「……」

「馬鹿な人達のために、死なないで」

多くの人を、見送ったというフィー。
まだ若いのに、その手で多くの命を摘み取った。
それが、マフィアとして生きていくために必要なこと。
彼女の世界の常識は、彼女の全てを作ってる。

「私、友達少ないの。しかもね、ぜーんぶ、御家関係。だからね、沙耶と友達になりたいの。休日は一緒に遊びに行けるような、そんな友達」

「……」

考えて、沙耶もそんな友達はいなかったことに気づく。
家族同然の幼なじみはいるけれど、家族と出かける感覚でしかなくて、だから、そんな、友達、なんて。

「…………欲が、出ちゃうの」

「えぇ?」

「欲が出て、また、誰かを不幸にしたら。なんて、そんなことばかり考えて、息苦しいの」

ドクドクドクと、音を止めない心の臓。
赤き線と青き線は全身に広がり、此処に繋ぎ止める。

「…………ぎゅっ、て、された」

「……」

「…………息を、ついたの。身を任せても、相馬は突き放さなくて、何故か、この人には甘えていいと、思ったの」

─家族は望めば、抱き締めてくれるだろう。
だって、心の底から大切に、愛してくれているのだから。

だから、沙耶は決して不幸な存在ではないのだ。
両親の唯一無二の娘として、恵まれた家庭に生まれて。
望めばなんでも叶う環境で、苦労なんて知らない。

友達は少ないけれど、不幸ではない。
いない存在として扱われるような経験もなくて、言わば、沙耶が勝手に不幸になろうとしているだけで。