世界はそれを愛と呼ぶ

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「……え、なんで?」

夜。ベットの上で沙耶が呟いた言葉に、

「なんでって、否定しなかったからでしょ」

と、ケラケラ笑ったフィー。

「というか、もう何時間も経ったよ?婚約成立!このスピード感、流石だよね〜おめでとう!」

「おめでとうって……おかしくない?おかしいよね?」

「おかしくないよ〜こんなもんだよ」

幼い頃からずっと日本語の勉強はきちんとしていたらしく、フィーは基本、ぺらぺらと日本語を話す。
それどころか、日本のちょっとした冗談なども習得しており、容姿を除けば、どこにでもいる日本人のよう。

「こんなもんなの?」

「こんなもんだよ〜」

「……え、そもそもなんで婚約?」

「え、そこから!?」

プロポーズ?のようなものをされてから、数時間。
脳が思考を放棄したことで、沙耶は困惑していた。
夜ご飯も終え、お風呂も終え、寝る準備をして、あとは夢の世界に旅立つだけだというのに。

「爆弾だよ。手紙の相手がどういう行動に出るのかっていう……婚約の話も段階を踏んで、公表場所を広げていくって。そうすれば、どの段階で手紙が来たかで分かるでしょう?」

「え、ええ……?」

あの短時間で、そこまで思考を働かせたというのか。
それとも、元々考えていたのか。

「不快感はないんでしょ」

「それは……」

「初対面って聞いて、私、びっくりしたよ〜」

「……」

横抱きも、ぎゅーも、手繋ぎも。
全部、全部、初対面の相手とするもんじゃないことは分かってる。分かってるけど、安心した。

その声をもっと聞いていたくて、その温もりを、もっと分けて欲しくなった。

(……落ち着かない)

自分の頬を包み込んで、深いため息をつく。
フィーはそんな沙耶の姿に、くすくすと楽しそう。

「いいなぁ、私もあの人に会いたいな」

「あの人って?」

「私の専属執事兼護衛兼婚約者なの」

「……役目多いね?」

「だって、知らない男は怖いじゃない」

「それは、そうかもだけど……」

「大好きな人よ。紹介するね!」

キラキラ笑顔。幸せそうな姿。
対して、生まれて初めて感じる感覚に、沙耶は惑う。