「手を貸してくれるん?うちの問題やのに」
「ここまで大事だと、黒橋の問題だけで収まらないかと。問題は、どうやって相手方を炙り出すかですが……ここ最近の手紙を見る限り、沙耶を監視しているという雰囲気ではなさそうですね。ある程度の行動を理解しているという……となれば、次は恐らく、俺達が転入してきたことを書くでしょうね。事件がひとつでも起これば、また、沙耶を責めるかもしれません。それが届くのを悠長に待ってもいいですが、面倒くさいので、先に手を打ちましょうか」
「手を打つん?事件を起こすとか?」
「ある意味、相手方にはそうかもしれませんね。その為には、まず、許しを頂かなくちゃなりませんが」
相馬は静観していたフィーを見る。
すると、フィーはニコッと笑って。
「よし、じゃあ、奥様に連絡しよっか?」
「話が早いな」
「ずっと聞いてたもん。気持ち悪いね。もしかして、この因縁、100年近く続いてる?」
「100年?」
「だって、この手紙の相手、沙耶の見た目が好みなんでしょう?そっくりだもんね、沙耶」
フィーの言葉に、沙耶は目を見開いて。
「…………フィー」
「んー?なあに、沙耶。殺す?」
「違……貴女から見ても、私は似てるの?」
「?、うん。そっくりだよ。でも、血縁だし。有り得るでしょ。ユイラ様はどちらかと言えば、目元が奥様に似てる気がするけど。沙耶は違う。隔世遺伝かな〜」
フィーがこのような空気の重い環境にいても平然な顔を見ると、やはり、マフィアの娘なのだと思う。
「じゃあ、、じゃあ、おばあちゃんは!」
「沙耶、落ち着け」
「朝陽や、久貴は!他のみんなは!本当にそんなくだらない理由で、殺されたと言うの!?」
「沙耶」
なだめても、止まらない。
何かあるのだろうが……息苦しそうな彼女は止まらない。
「沙耶、落ち着きなよ」
「フィー!」
「沙耶。あのね、どんな事でも大抵、はじまりは下らないことばかりだよ。どれだけ物事が大きくなったとしても、はじまりは小さくて、下らなくて、だからこそ、私達みたいな人間は存在出来ているんだ」
「……やだ、やだよ、やっぱり、私が」
「沙耶、その続きを言わないで。逃げようとしないで。彼らは全てを理解して、道を選んだのかもしれない。彼らの死の理由を、貴女が全て背負ったら、貴女が彼らだったことになる。それは、彼らにも、遺されたものにも失礼だし、冒涜的な行為だよ」
沙耶の両頬を包んで、軽く叩くフィー。
「後悔して、泣きじゃくるのはいいの。でも、自分のせいにして、終わりを選ぶのは、単なる逃げ」
過酷な環境を生き抜いてきたからこそ、彼女はその言葉を口にできて、前を見ていられる。
「逃げないで、できることはやらなくちゃ。もう尽きた、なんて、諦めないの。あるでしょ。やることも、使えるものも、使える人だって。─ね、相馬」
フィーがはっきり言って、振ってくれて助かった。
相馬は頷いて、沙耶の頭を撫でる。
作戦のひとつだ。他意はない。全てが終われば、終わり。
─それだけの、話。
「俺と結婚しよう、沙耶」


