世界はそれを愛と呼ぶ




「いつから届いていたの?」

「小学6年生の、夏休み……」

「そう。でも、ここにあるのは……」

「捨てたの!」

沙耶が声を上げる。

「最初はっ、私を恨んでいる人がいてもおかしくないって……だって、久貴おじさんも、朝陽の妹を名乗る人も、みんなっ、みんなっ、黒宮の皆のお父さんだった、大樹兄の大切なお父さんだった朝陽だって!!皆、私が奪ったって……だから、でも、それは、間違ってなくて、でも、えっと……っ」

頭を掻き毟るように抱え込んだ沙耶は明らかに混乱していて、泣きたいのに泣けなさそうで。

「私があの日、朝陽の言う通りにしなければ!そもそも、私が生まれて来なければって!ずっと思ってた時に、その手紙が届いて……っ、私が生きてるだけで皆が不幸になるってっ、死んでいくって、だから、私を引き取ってくれるって……殺してくれるって!でも、怖くて、気持ち悪くて、ズタズタに切り裂いて捨てたの!でも、そしたらまた届いて、全部見てるって!逃げられないって!大樹兄達が久しぶりに帰ってきた日だって!数日後に手紙が届いて、また不幸にするって、同じように奪うんだって……っ、わかんなくなって……幸せになんてなれなくていいからっ、家族のことは守りたくてっ、期限を決められた時に何も言わなかったらっ、それから……」

支離滅裂だったが、ある程度掴めた。
全ての手紙にサッと目を通した感じ、ある程度、向こう側の狙いが見えてくるというか、なんというか。

呼吸が荒々しい沙耶を、このまま放っておいたら、過呼吸になるだろう。
でも、沙耶は息の仕方を忘れたように震えて、苦しそう。
泣くこともまともに出来ないほど、手紙の相手は追い詰めたのだろう。

「これで全部じゃないな?」

小さく頷く沙耶。本当、この時代に文筆とは、中々の気色悪さである。

恐らく、沙耶が1通目を処分したから、調子に乗ったのだろう。2通目以降、『前と同じように処分するように』という文面がちょくちょく登場しているのを見るからして、明らかに残されていては困るという感じだ。

でも、沙耶はそれを取っていた。

「よく手紙取ってたな、えらい」

相馬がそう言うと、

「私が居なくなった後、きっと、お父さんは私の部屋を掃除してくれる。だから、これをわかりやすい所に置いておこうと思ったの。いっぱい、私が出来ることをして、全部全部置いて……でも、やっぱり」

迎えられて、抱き締められただけで涙が溢れてしまうくらいには、自分自身が限界だと、ここに帰ってきた日に感じてしまったらしい。

それをポツポツと話した沙耶は変わらず息苦しそうだったので、相馬は沙耶の前にしゃがみ込んだ。