「この扉の先、三つ、また扉がございます。音で確認する限り、真ん中の扉には最近、捕らえられたであろう人間の娘がいます。左右は確認しておりませんが、一度だけ、左側の扉が開き、金色の髪をした少女が、この鉄格子の道を駆け抜けていく姿を見かけました」
「左……少女はひとりで?」
「いいえ。少女より少しだけ年上の、少年を連れていました。彼がなにか大きなものを抱いているところまでは確認しましたが、恥ずかしいことに薬を打たれた直後でして、解毒に時間がかかり、詳細は把握出来ていません。感覚のみで話すならば、少年は貴方と似た何かを感じました」
「……分かった。夜雨(ヨサメ)、俺はこの先を確認してくる。彼女と櫂たちを連れて、上へ。指一本、彼らに触れることを許すな」
「御意」
夜雨と呼ばれた女性は頭を下げると、すぐに後ろをついてきていた3人に声をかけ、来た道を引き返し始めた。
「そ、相馬……私はついて行っていいの?」
一緒に帰った方が良いじゃないんだろうか。そう思ったけど、彼は。
「怖いか?」
「ううん、そうじゃなくて。邪魔じゃないかなって」
「邪魔じゃない。お前が憂うものは取り除く。約束するから、今は何も考えず、ここにいろ」
「わ、わかった……」
どうしたのだろう。さっきから妙に、こちらを見通しているような。それでいて、逆らえない感覚は何?
彼に触れられるだけで、本当に何もかもがどうでも良く、大丈夫だと感じられる。それは、どうして?
「……鍵か」
相馬は目の前の扉を開けようとして、止まる。
そして、─バキッ、、、容易く、破壊した。
「夜雨の言う通りだな」
もう相馬が何を壊しても、驚くだけ無駄だなと思う。
相馬は壊した扉を退け、中を覗く。
話の通り、三つの扉。そして、真ん中を見る。
そして、相馬はその真ん中の扉をノックした。すると。


