世界はそれを愛と呼ぶ




「…………え、マジック?」

「いや……うん、後で説明する」

どうやら、口頭で説明できるものじゃないらしい。
でも、明らかに足でまといな自分をわざわざ抱っこしてまで連れてきてくれてるし、沙耶のために抱き方変えてくれたし、その上で暗いのが苦手なことを心配して、マジックだか何だかよく分からない不思議な現象も見せてくれたわけで、沙耶はこれ以上何も言うまいと聞くのをやめ、大人しく、相馬に身を任せた。

恥とかそんなことよりも、これ以上邪魔になりたくない。

相馬は沙耶が安定した体制を取れたことを確認すると、少し走る、と言い、その場から駆け出した。

そんな相馬に合わせて、どんどん炎もついていく。
これがマジックなら、本当に種が知りたくて仕方がない。

走っている最中は安全面を考慮して、口を開かない方が良いだろうなと思い、黙っておく。
人肌に触れる経験は幼い頃からあまりなかったし、こんな風に抱き上げられたことも幼い頃以来なかったから朧気だけど、とりあえず、相馬の腕の中は心地良かった。

このまま眠ったら、安眠できそうな感じ。
─ちょっと変態みたいだなと、自分でも思うけど。

なんだろう。匂いとか、温もりとか、そんな安直的なものではなくて、言葉では説明できないそんな─……。

『─茉白(マシロ)!!!!!』

唐突に聞こえてきた声に、相馬のスピードがあがる。
人間に出せる速さなのか謎なくらい早い彼は、あっという間に声がした部屋にたどり着く。

すると、先を行っていた御杜さんが牢屋の鉄格子を掴んで、叫んでいた。

「っ、なに、ここ……」

御杜さんが叫ぶ鉄格子の向こう側には、ぐったりとして、明らかに意識のない女性─ハルだ。

「ハ、ハル……っ」

間に合わなかったのだろうか。助けられないのか。
喉が熱くなり、息苦しい。手が震え、声が震える。

「─落ち着け、沙耶。ゆっくり呼吸して。彼女はまだ生きている。助けるから」

相馬の腕の中にいなければ、崩れ落ちていただろう。
相馬は自身の腕の中にいる沙耶を見下ろし、優しく微笑むと、そっと、沙耶を地面に下ろす。

「沙耶、彼女を診るから。手はこのままで」

しっかりと握られた手を見せるように持ち上げられ、沙耶は頷いた。相馬は小さく頷き、


「櫂、どけ」

「っ、相馬」

「いいから」

鉄格子には、頑丈な南京錠と鎖。
相馬はそれを見ると、何か物を握りつぶすような仕草で鎖を握った。すると、鎖は音を立て壊れ、南京錠も同じような仕草でツルの部分をへし折る。

「─櫂、彼女の身体を起こせ。確認する」

怪力、なんて言葉では表せない。目の前の光景に驚きつつも、鎖を壊した右手を繋いでない方の手で掴む。

「?、どうした?」

本人は痛みすら感じていないのか、きょとん顔。

「い、痛くない?」

「…あ、ああ、そういうことか。痛く無いから、大丈夫」

沙耶が何を言いたいのか把握した彼はそう言って、沙耶の手を引き、御杜さんに続いて、ハルの元へ近づいた。