世界はそれを愛と呼ぶ



「まぁ、結局のところ、最期がどんな結末であったとしても……あの方が苦しまれた長い歳月は消えない。あの方は御身を犠牲にし、これから先に生まれくるであろう強き者を守る規律を作り上げられた。名称を与え、居場所を作った。それを嘘だったものに、曖昧なものに、私達はしたくない」

「……そうですね」

苦しんだ日々は消えない。
それが例え、消された歴史だったとしても。

奪われた命は、重なった絶望は、確かにそこにある。

「……あ、そういえば、最後、彼女の元へとある男性が訪ねてきました。私の意識を浮上させてくれた方なんですが、体温があって。しかも、彼女が亡くなった時に共に死んだはずの腹の胎児が、御園要によって、現生に肉体を得たとかいう……」

「?、どういうこと?」

「私もよく、わからないんですが」

最後、彼は笑っていた。そして、言ったあの言葉。

「『京子によろしくね』と言われました」

「私に???」

心当たりが無いらしい。
京子さんは首を傾げ。

「私に知り合いなんて多くないんだけどな……」

家から出る生活をしてこなかった。
学校に通わなかった。そんな彼女のテリトリーは狭い。

「家関係かな。─まぁ、一応、頭の隅には置いておく。……私の知り合いかどうかは置いておいたとして、彼女が、神夜さまがあそこで孤独に泣いている日々を断ち切れたのなら、それだけで嬉しいもの」

御園家が誇る、千年間咲き続ける桜。
その桜の元で亡くなったお姫様はずっと、泣いていた。

「御園要……」

「え?」

「その不思議な男性が言ってました。御園要の生まれ変わり……記憶を見る限り、相馬ですよね。きっと」

「……そう言っていたの?彼が?」

「はい。自分をすくい上げた御園要の生まれ変わりが、現世に帰って来たから、自分はここまでの道を見つけることができた。そこには100年ほどの時間を要したけれど……御園要の能力を生まれ変わりが完全に超えたから、ここまで足を踏み入れることが出来たのだと」

「……」

京子さんは黙り込む。静寂が空間を包み込む。

「─魂を悪用される道を、御園要は塞いだんだな」

黙っていると、その静寂に入ってきた声。