☪︎
─目が覚めた時、一言、「おかえり」と、京子さんには微笑まれた。
経験した不思議話をすると、京子さんはくすくすと笑って、「かぐや姫に会われたのね」と。
「─最期、御園要はどうやって、鷹遠を眠らせたのかは理解出来ませんでした」
とりあえず、ご飯!ということで用意された、眠り続けていた沙耶の身体に優しいお粥。
それを食べながら訊ねると、
「おふたりが身罷られたのは、終戦前後だと言われているわ。沙耶が見た話を聞く限り、間違いはないのでしょうけど……鷹遠様の最期はね、曖昧なの」
「曖昧?」
「ええ。そもそも存在自体が曖昧にされてしまっているの。私達のような直系の人間は、事実、この世界にいらっしゃった方であることは認識しているけど……普通に考えて、人はそこまで長くは生きないでしょう?歴史的にはとっくに身罷られているはずの人だから、曖昧なの」
「でも、御園要さまは」
「あの方はね、産まれた時から、鬼の里にいらっしゃったから、人の世界での、今でいう戸籍が不明瞭だったの。けど、能力は、顔つきは御園家のもの。何も言えないわ。しかも、当時は御園家を支えていた当主同然の、御園鷹遠が連れてきたんだもの。誰もが膝を折る」
「そうなんですかね」
「だって、怖いじゃない?普通は」
「……」
そういうものなのだろう。いまいち分からないけど。
「─相馬はね、既に限界だった肉体にトドメを刺したのではないかと考えているの」
「刺したとか、そういう話ですか?」
「いいえ。眠るように亡くなると言われる、鬼の里で取れる特別な植物による毒薬なの。人の世界への流通はないわ。理由は言われなくても察してくれるでしょうけど……鬼はね、心臓を貫かれても死ねないの。栄養を取ったら、傷が塞がってしまうから。食べなければ良いと思うでしょう?でも、そうはいかないの。本能が支配して、食べさせるの。彼らに人を食い殺させて、その身を保とうとする」
それは、生存本能と呼ばれるものだろう。
人間にもあるものだし、食が細いと怒られる沙耶でさえ、これが食べたい!という欲求が現れた時は、何かしらの成分が足りなくなった合図だと思って、口にするようにしているほどだ。
人が生き物の命を頂いていることと同じ。
鬼にとっては、それが人。
─それを是とは、人の身では言えないけれど。
「鬼の里にはね、警察なんて居ないわ。でもね、絶対的な法を司る長はいるの。その方が使われる、使うことが出来る、唯一無二の毒薬」
「……」
「それを、恐らく使ったのだろうって」
その薬を、御園要が使用したならば。
その歴史が残っていたならば、この家の歴史書に遺されている、死ぬまで苦しんだ人々は救われたのではないか。
─そこまで考えて、長命な彼らを意図的に手折るのはいけないという決まりがあるのかもしれないと思い直す。
─目が覚めた時、一言、「おかえり」と、京子さんには微笑まれた。
経験した不思議話をすると、京子さんはくすくすと笑って、「かぐや姫に会われたのね」と。
「─最期、御園要はどうやって、鷹遠を眠らせたのかは理解出来ませんでした」
とりあえず、ご飯!ということで用意された、眠り続けていた沙耶の身体に優しいお粥。
それを食べながら訊ねると、
「おふたりが身罷られたのは、終戦前後だと言われているわ。沙耶が見た話を聞く限り、間違いはないのでしょうけど……鷹遠様の最期はね、曖昧なの」
「曖昧?」
「ええ。そもそも存在自体が曖昧にされてしまっているの。私達のような直系の人間は、事実、この世界にいらっしゃった方であることは認識しているけど……普通に考えて、人はそこまで長くは生きないでしょう?歴史的にはとっくに身罷られているはずの人だから、曖昧なの」
「でも、御園要さまは」
「あの方はね、産まれた時から、鬼の里にいらっしゃったから、人の世界での、今でいう戸籍が不明瞭だったの。けど、能力は、顔つきは御園家のもの。何も言えないわ。しかも、当時は御園家を支えていた当主同然の、御園鷹遠が連れてきたんだもの。誰もが膝を折る」
「そうなんですかね」
「だって、怖いじゃない?普通は」
「……」
そういうものなのだろう。いまいち分からないけど。
「─相馬はね、既に限界だった肉体にトドメを刺したのではないかと考えているの」
「刺したとか、そういう話ですか?」
「いいえ。眠るように亡くなると言われる、鬼の里で取れる特別な植物による毒薬なの。人の世界への流通はないわ。理由は言われなくても察してくれるでしょうけど……鬼はね、心臓を貫かれても死ねないの。栄養を取ったら、傷が塞がってしまうから。食べなければ良いと思うでしょう?でも、そうはいかないの。本能が支配して、食べさせるの。彼らに人を食い殺させて、その身を保とうとする」
それは、生存本能と呼ばれるものだろう。
人間にもあるものだし、食が細いと怒られる沙耶でさえ、これが食べたい!という欲求が現れた時は、何かしらの成分が足りなくなった合図だと思って、口にするようにしているほどだ。
人が生き物の命を頂いていることと同じ。
鬼にとっては、それが人。
─それを是とは、人の身では言えないけれど。
「鬼の里にはね、警察なんて居ないわ。でもね、絶対的な法を司る長はいるの。その方が使われる、使うことが出来る、唯一無二の毒薬」
「……」
「それを、恐らく使ったのだろうって」
その薬を、御園要が使用したならば。
その歴史が残っていたならば、この家の歴史書に遺されている、死ぬまで苦しんだ人々は救われたのではないか。
─そこまで考えて、長命な彼らを意図的に手折るのはいけないという決まりがあるのかもしれないと思い直す。


