世界はそれを愛と呼ぶ



「─先程、公共の施設にいる”逃がした子”から、御巫久遠と接触したと情報が入りました。彼が誰を探していて、そもそも、何をしようとしているのか」

淡々と話す彼から、少女を受け取る柚琉。

「御園相馬……彼は最愛の彼女のために、世界を動かすのですね」

……御園相馬という、自分達が頂く当主はそういう人。
優しく、穏やかな人柄?─冗談じゃない。

彼が優しいことは否定しないが、それ以上に冷酷さも持ち合わせているし、腹の中を見せない彼の雰囲気は、彼を孤独な地位へ連れていくのは容易だった。

「あなた方も探しに来たのでしょう?常磐家の最後のピース、能力を持つものを─俺を」

ぶわっ、と、彼からもたらされる高温。
一気に場の空気が暑くなり、乾いていく。

「……この力が、あなた方が欲するならばあげましょう。ですが、俺にはまだやることがある。だから、彼女を、心優を連れて出ていってください」

微笑んで、能力の矛を収める。
おかげで、結界を張る必要がなくなった。

「ひとつだけ聞かせて欲しい。いや、言わせてくれ」

その姿は、儚かった。
今にも消えてしまいそうなほど、遠くを見ていた。

だから、綺羽は彼らをまとめる春の王として伝えておく。

「─君を犠牲にして得られる未来なんて、決してハッピーエンドとは言えないから。彼女を愛しているなら、彼女の祖父が行ったやり方ではなく、貴方なりのやり方を考えなさい」

「……心優の祖父を、御存知で?」

「御存知も何も、貴方も教えてもらったんじゃないの?私は知り合いにお願いして、あの廃墟の近くの木の枝を頂いたの。そして、教えてもらったわ」

「……」

「あなたがこの生活の中、どうやってそれを突き止めたのかは知らないけど……おおかた、自分の本当の立場を含め、この施設の中で彼女のために上手く立ち回ったのでしょう。”自分は殺されないから”と」

綺羽の言葉に、彼は微笑んだ。─それが、答えだ。