世界はそれを愛と呼ぶ

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「─初めまして」

久遠は、死ぬことを許されなかった。
けど、約束をしてくれた。
希雨が居なくなった世界で、生きることは求めないと。

だから、最後の役目かもしれないと思いながら、相馬からの任務を請け負い、訪ねたひとりの少女。

その少女は児童養護施設で、ひとり静かに本を読んでいた。

「……あなた、誰?」

こちらを見て、誰何してくる視線に久遠は微笑む。

「御園相馬さんから、君を訪ねるように言われたんだ」

「……実家関係?」

「うん。君の家をね、粛清するから」

「そう。好きにしたら?」

興味を無くした少女は、読書に戻る。
久遠は少女の傍に座り込む。

「まだ何か用?私達を売った人なんて、家なんて、心底どうでも良いのだけど」

「そうだよね。これに関してはやめてと言われても、止められないけど」

「じゃあ、何?」

「一体、どれだけの子どもが送られたの?」

「っ……」

「知っているよ。これでも、御巫家の嫡男だから」

「御巫……」

「御巫久遠。それが、俺の名前」

彼女は俯いて、すぐに本を閉じる。

「……春の華宮家は、相馬様の名のもとに粛清された。けど、夏と秋と冬はそのまんま。だけど、一番腐っているのは、この分家共。私の出身は、冬の天ヶ瀬(アマガセ)。夏の常磐も、秋の西大路も……春の華宮家に巣食っていた、北御門が滅んでなお、その欲深さは止まらない」

「何を望んでいるのか、知ってるの?子どもを犠牲にしてまで……」

「……あなたのような立場の人に話すのもどうかと思うけど、色々な思惑を持った人間が実験をしてるだけだよ。不老長命になりたい、特殊能力を持ちたい、美しい見目になりたい……そんな人間なら一度は願ってもおかしくない願いを、現実にしようとしているの。実際、御園家の人々はそうでしょう。美しい見目、類い稀なる才能、特殊な能力と、その血筋ゆえの不老長命。子どもを使うのは、使い勝手がいいから。使い捨てが効くから。実際、私の母はその実験で薬漬けにされたのに、私がどこにでもいる普通の子どもで、その上、女だった。だから、母は死んで、私は捨てられた。それだけの話」

淡々と話す彼女は、それが当たり前のことであるかのように話す。

「それが、御園家の人間を攫ったりした理由?」

「さあね」

軽い言葉に、湧き上がる怒り。
それが表情に出ないように気をつけるが、

「……ごめんね。恋人、攫われたのに何も知らなくて」

既に知っているらしく、申し訳なさそうな顔。