御園家が生まれた理由は、鬼が生きる為。
絶えかけていた愛する人の一族を、未来へ繋ぐため。
初代は全てを受け入れ、包み込み、家を作り出した。
莫大な資産。
名は広がり、御園家は誰もが憧れる高みへ。
正直、このまま渡してもいいのではないか。
今の当主さえ処分してしまえば、一族が全員悪い訳でもないのだから、周囲に影響もないのでは。
だって、初代が守りたかった対象はもう、鷹遠だけになってしまっているのだから。
一途な彼らが、婚外子なんて考えられない。
何より、番を持つ鬼にそれは毒でしかない。
だから、自分は神夜とふたりで─……。
「………………は、はは」
しかし、それを当主は許さない。
何故なら、脅威にしかならないから。
記憶を取り戻した先代の息子など、邪魔だろう。
だって、鬼なのだから。自分は無力だから。
だから、自分の血を引く娘ですら、簡単に殺してしまうのだ。
鷹遠を待ち受けていたのは、血溜まりの中で事切れた愛妻。
贅沢ではない暮らし。
廃屋に近い小屋で2人、幸せだったのに。
彼女は事切れた。
傍では桜の大木が咲き誇っており、彼女の死を嘆くように花びらが舞っていた。
鷹遠が彼女の骸を抱けば、感じるのは小さな気配。
─小さな生命が、彼女の腹にはいたのだ。
それを察するにはもう、手遅れだった。
彼女の骸を抱き、嘆く鷹遠に近づく影。
両手では足りない程の剣士は、鷹遠に近づく間もなく、塵となって、地に還っていく。
─……その日、夥しい光景がその血を彩った。
「当主様、良かったんですか?お嬢さん殺して」
「何。代わりなら他にもいる。あの器量持ちは中々いないが、よりによって先代の息子と一緒になるとは……何も知らぬからって、愚かな選択を」
「ははは……しかし、その先代の息子も何も知らぬでしょう。まとめて処分するように伝えていましたし、すぐにでも」
そこで、側近の言葉は強制的に消え去った。
男は振り返った。
そこに居たのは、首のない姿で立つ側近。
「ひっ、ひぃっ、!!」
ゆらり、と、側近の背後で揺らめくのは。


