世界はそれを愛と呼ぶ



「沙耶に関して、老害共は?」

「基本的には陽介様とかが抑え込んでいるけど、沙耶が取り仕切り出して怪しい動きをした人間は全員、監視をつけてあるよ。例えば、外部と連絡取ろうとしたり、ね。沙耶を消そうと目論むヤツらもいるみたいだけど、 全然相手にされてないよ」

楽しそうな甲斐は、期待を裏切らない沙耶が本当に面白くて、刺激的な存在なのだろう。
予想の範疇を超える婚約者は今、呼ばれた先で何を見て、何を思い、何を得るだろう。

「……ん〜、綺羽と柚琉はまだ無事だな。わざと捕まって、影で情報を収集してるみたいだ」

「そこまで見えるんだ?」

「分身を飛ばしているだけ」

そろそろだから、と、目を閉じて、分身へ意識を同化させれば、こちらに気づいた綺羽たちが笑いかけてくる。

怒らなければならないんだろうが、ここで怒れば、見張りが聞きつけてしまうため、後に大切に取っておく。

久遠には別の任務を託したし、はてさて、あとは適当に施設全体を破壊して、データを壊すだけだが。

(既に、薫に頼んで、施設で保管されていたある程度の情報のバックアップは、薫の情報屋たちに消させているから……)

相手はそんなことに気づいていないだろうが、気づいたところで、何もかも終わり。
何故なら、今から破壊し尽くす予定だからだ。

(そういえば、新商品が何とか言ってたな……それをパーティーで紹介させて欲しいとか何とか……水樹に投げた話だが、今夜の1件があっても、来週のパーティーに間に合うのかどうか)

情報を消したり、ある程度の情報収集だったり。
慧の頭の整理の時間とかで、1週間と少し要した。

その間に、御園家をある程度、掌握したという沙耶は確かにすごいし、暴れている、という表現であっているかも。

何にしろ、早く逢いたい。抱きしめたい。
あいつが全力を出しているというのは、不安を押し殺している証拠だから。

「─甲斐」

「なに」

「俺は自力で沙耶の元へ帰るから。……あとは頼むな」

相馬が微笑むと、甲斐は頷き、一礼した。
信頼している。兄のような彼のこと。

まるで遺言のように聞こえるかもしれないけど、甲斐は相馬が沙耶を置いて逝かないことを知っているので。

「─じゃあ、行ってくる」