世界はそれを愛と呼ぶ

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「……そろそろかな」

空に輝くのは、満月。
見張りの男は、自分の退勤時間を今か今かと待ち侘びていた。─この後に待ち受ける、大仕事のために。

星ひとつ見えない夜空、真ん丸のお月様が輝く。

「おい」

交代の男に声をかけられ、振り向いた。
微笑んで、引き継いで。

「お疲れ様でした」

足速にその場を去って、警備室へ。
ロッカールームに入り、着替え、すぐに外へ出る。

この施設の警備は厳重で、施設内でスマホなどの電子機器を扱うことは許されていない。

だから、足早に退勤してしまおう……そう思っていた時、立ち塞がる人の影。

「─……どこへ行く、裏切り者」

そう呼ばれるなんて、心外だ。
裏切ってなんていない。─元々、こちら側ではない。

「お前、誰と繋がっている!!!!」

怒号、罵り、それは、罪に対する罪悪からくるものか。
否、そんな人らしい気持ち、彼らには残ってないだろう。

向けられる銃口、背後を静かに取っているであろう別部隊、青年はかけていた眼鏡を外し、眉間を揉む。

「誰かの権力を傘に着るばかり、反撃されれば、その怒り。─なんと身勝手なことだろう」

青年は、満月を指差した。

「月が満ちる夜は、不思議なことが起こる。─ここ数日に起こった不祥事は全て、解決したはずでしょう」

手引きをした。でも、手は下していない。
何度も繰り返すが、裏切ってもいない。
だってそもそも、彼ら側ではないのだから。

「さあ、一緒に遊びましょうか」

取り出された、鉄扇。微笑む、中性的な男。

「夜が明けるまで、一緒に舞い踊りましょう」

青年に課せられたのは、ただ、舞い踊ること。

青年の名は、久鬼悠生(クキ ユウセイ)。
一般人生まれだが、先祖返りの持ち主とされる。

「全ての吐息が、途絶えるまで」

─そして、姫巫女たる御園京子の、番である。

悠生が鉄扇を翻す。何もない空間に、花弁が舞う。

「早めに終わらせようね。─京ちゃんの所に帰らなくちゃいけないから」