世界はそれを愛と呼ぶ



「─皆様に、御迷惑でしょう。急に変なことをしてはいけないと、何度教えたらわかるの?」

「……お嬢がちゃんと受け止めるとは思わなかったな」

寸止めするつもりだったんだけど、と、長髪の男は楽しそうに笑いながら、呟いた。
鉄扇で簡単に止められてしまったこと、少し悔しげ。

「……ごめんね、沙耶」

一方、もうひとりは落ち込んだ顔。
やれって言われた、と、短髪の青年は長髪の青年を指差す。

「腕が鈍っていないようで何より、だろ」

指差された彼は肩を竦め、2人は長刀を鞘にしまった。

「─……夏鶴(ナツル)、私を誰だと思ってるの?」

挑戦的な目をする彼に、淡々と沙耶は問う。
張り詰めた、緊張感のある空気。
その中で彼は目を細め、少し息をつくと。

「我らが主、健斗さんの唯一のお嬢」

「わかっているなら、何よりよ。私はそうあらなければならないのだから、無駄な確執は生まないで?……そして、冬璃(トウリ)は、私を攻撃することがそんなに辛いのなら、他の奴の口車に乗らなくていいと、いつも言ってるでしょう?悲しそうな顔をしないの。怪我ひとつないから」

沙耶は自分より大きい青年を抱き締めて、ため息。
冬璃と呼ばれた青年は、少し震えていた。

(うーん、兄さんが見たらどうかな)

水樹はそんなことを考えながらも、沙耶の身が無事でよかったと思う。

「「ごめんなさい」」

沙耶の雰囲気に押されてか、素直に2人が謝る。
頭を下げられても……という感じだが、結界をゆうに超えてしまったということは、兄さんも面識があるのだろう。

少なくとも、今、ふたりがここを訪れたことは伝わっているだろう。何故なら、ふたりが開けた穴が一瞬で塞がれてしまったから。

……兄さんは無事。じゃないと、とっくに結界は崩壊してるはずだから。

相馬兄さんは、久遠兄さんを追いかけて、施設に行った。
それなのに、偵察に行かせた感じ、動きがない。
先に突入したという馬鹿ふたりは、無事だろうか。

鬼の部下にお願いして、侵入させることも考えたが、兄さん曰く、彼らはその血ですらも利用して、研究をしているらしいので、下手な行動を打つのはやめた。

今はただ、パーティの準備。
そして、鍛錬を繰り返す毎日。