世界はそれを愛と呼ぶ




やっとの思いで、あの方の視界に入ったのに!
元々の顔に比べたら劣る美しさを手に入れて、やっとの思いで会話をしたわ。
なのに、あなたはまた、わたくしから奪うの!?

「どうしてっ、相馬様……っ!!」

微笑んで下さった。わたくしを幸せにしてくれる男性。
容姿も、財力も、立場も、何もかもがわたくしに釣り合う存在。

わたくしは彼のために、彼はわたくしのために産まれてきたの。幸せになるために。

(なのにっ、どうしてあなたが変わらないまま、あの方に愛されているの?)

『……大丈夫?お腹すいたの?』

許さない。許さない。許さない。許さない!!!

あなた達がいなければ、わたくし達がそちら側にいたの!
わたくしが、あなたを見下ろしていたの。

『これあげる!』

お菓子を差し出すのも、わたくしだった。
わたくしは幸せになりたいの。
幸せにならなければならないの。
なのにいつだって、産まれた時から、あなたが全部、わたくしから奪っていくの。

(許せない……)

わたくしは、負けていないわ。
負けていない。負けていない。負けていない!!!!

「………………っ、わたくしの、なのよ」

微笑み合う、幸せそうなふたり。
わたくしのもの、わたくしの居場所なのに!

全てのものを投げ、壊し、肩で息をしながら、女は床に座り込む。

お祖母様に、とある男は言った。
『可哀想だね』
お母様に、また、とある男は言った。
『望むばかりか。……可哀想だな』
そして、わたくしに。

『大丈夫!何も怖くないよっ!』

貴方はお菓子を差し出して、手を取って、無邪気に笑いかけたわ。

……それが、どれだけわたくしを惨めにしたと思う?

(……………………ああ、そうだわ)

そして、少し冷静になった頭で考えた。

(…………消して、成り変わればいいのだわ)

誤算だった全てを壊す為に。
今度はあの方自身の手で、あなたを消してあげる。

あなたは要らないの。
あなたはここで捨てられるの。
あの女の血筋を絶つの。
でなければ、わたくしは幸せになれないのだから。

「ふふふっ、あははっ!」

女は天井を見上げた。

「あはははは」

その姿は、とても滑稽で。

「あははははははははははは」

醜くて、

「あははははははははっ!あははははは!」


─……とても可哀想だった。