世界はそれを愛と呼ぶ



「だって、この街の人間だからね」

どんなに絶望的な状況でも、健斗たちを信じてくれる彼ら。

大樹は集まってくれた人々達に呼ばれ、健斗の傍を離れていく。

廃墟だった場所を、ここまで立て直した。
平和な、誰もが望む街の形へと。
彼らが暮らしやすい日々を守りたかったから。

過去のような悲劇は繰り返さない、あんな、人を人だと思わない、尊厳すらも捻り潰すような悪業を許すわけにはいかない。

絶対に終止符を打たなければならない。

そして、帰せなかった彼らの家族の、骨の一部でも見つかれば……。

『どうか、無理をなさらないでくださいね。健斗様。あの日、僕達家族が姉を亡くして苦しんでいた日、間違いなく、あなたは救世主でした。貴方がいたから、父も母も天寿を全うし、僕も家族を持つ決断が出来たのです。この子達は、貴方が守った未来なんですよ』

そう言って笑った、とある一家の大黒柱。
『けんとさま!』と、拙い言葉で甘えてくる可愛い子供を、彼は健斗が守った【未来】と笑ってくれた。

(……だからこそ、二度と喪わせない)

組織が、国が、人々が、己の欲望とエゴで、弱者を蹂躙するならば、その者たちの全てを焼き尽くす、滅ぼし尽くすと、若い頃に誓ったように。

健斗の罪は消えず、地獄へ行くことは避けられないが、それで誰かの笑顔を買えるのならば、安いもの。

「─健斗」

「ユイラ」

それに、自分には彼女がいるのだから。

「難しい顔をしてどうしたの?」

「いや……それより、君は逃げんで良かったん?」

「フフッ、それは冗談?意地悪?本気だったら、怒るわ」

トン、と、胸に寄りかかりながら、聞いてくる愛妻。
健斗はユイラを抱き締めながら、

「……意地悪や」

本音を隠して、微笑んだ。